令和5年度市長施政方針

更新日:2023年02月23日

松江市議会2月定例会の開会にあたりまして、令和5年度の市政運営に臨む、私の基本的な考え方をお示しし、議員の皆様、市民の皆様にご理解とご協力を賜りたいと存じます。

はじめに

新型コロナウイルス感染症、物価高騰への対応

はじめに、長引く新型コロナウイルス感染症と、昨今の物価高騰への対応について申し上げます。

新型コロナウイルスの感染が国内で確認されてから、すでに3年が経過しました。この間、市民の皆様、事業者の皆様におかれましては、感染拡大防止のために多大なご協力をいただいておりますことに、改めて感謝申し上げます。

ワクチン接種が進捗し、重症化リスクに応じた保健医療体制の重点化など、感染症への対応策が進展する中にあって、政府は、先月下旬、5月の大型連休明けに、新型コロナの感染症法上の位置付けを「5類感染症」に変更する方針を決定しました。

新型コロナ対応が大きな転機を迎えることとなりますが、入院・外来医療費の公費負担や医療提供体制の確保などに関する国の動向を注視し、市民の皆様の健康を守り、生活に混乱が生じることのないよう、必要な対応を図ってまいります。

また、原油価格や物価の高騰によって、昨年12月の消費者物価指数は、前年同月に比べて4.5%上昇しており、市民生活や企業活動に甚大な影響を及ぼしています。

本市では、物価高騰対策として、全世帯を対象とする水道料金2ヵ月分の減免のほか、中小・小規模事業者が行う省エネルギー効果の高い設備投資に対する助成や、運輸業における燃料費支援などに取り組んでおります。国においては、昨年10月に閣議決定された「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」によって、電気・ガス・ガソリン代などの負担軽減措置や賃上げの促進など対策が講じられていますが、市民の皆様の負担感は依然として大きいものと受け止めております。この難局を克服するため、国による抜本的な対策が求められることから、市長会などを通じて必要な予算措置を要望してまいります。

そして、引き続き、市民の皆様、事業者の皆様の実情を的確に捉えて、感染症の拡大防止と市民生活・地域経済の維持との両立を図り、誰もが松江で安心して暮らすことができるよう、力を尽くしてまいります。

「夢を実現できるまち 誇れるまち 松江」の創造に向けて

さて、令和5年度は、昨年3月に策定した松江市総合計画「MATSUE DREAMS 2030」の実践2年目となります。

これまでに議論や検討を重ねてきた施策を着実に実行に移してまいりますが、その中でも、令和5年度に重点的に取り組むべき3つの施策について、皆様と共有させていただきます。

人口減少対策と地方創生の推進による産業経済の活性化

第一に、人口減少対策と地方創生の推進に資する、地域産業と経済の活性化です。

本市の総人口は、昨年10月1日現在で202,280人、前年の同時点に比べて1,336人減少しています。また、令和元年以降、転出超過の状況が続いており、特に20代の若年層の流出が目立っています。加えて、年間出生数も10年前に比べて300人程度減少し、1,500人を下回る水準となっています。

一方で、近時のコロナ禍において、全国的に地方への移住意欲が高まると同時に、テレワークなどデジタル技術を活用した新たな働き方が注目されています。

本市では、全国に先駆けて令和元年度からワーケーションの可能性に着目し、そのストレス低減効果にかかる科学的な分析や、地域住民との交流による課題解決を組み込んだ「松江式ワーケーション」の開発と利用の促進に取り組み、昨年6月には、電機メーカー大手の富士通と「ワーケーションパートナーシップ協定」を締結するなどして、昨年末までに約160名の方々に、このプログラムに参加していただきました。

今後も、「松江式ワーケーション」の利便性と拠点性を高め、「水の都・松江」の豊かな自然、「茶の湯文化」など、唯一無二の魅力を組み合わせてPRすることで、都市圏の企業に訴求し、移住・定住の促進にもつなげてまいります。

加えて、本市における起業・創業や新しいビジネスの創出を促し、地域経済を発展に導くサイクルを生み出す「MATSUE起業エコシステム」の構築を図ってまいります。

本市では、昨年1月に起業・創業を支援するコミュニティ「MIX」を設立したのを皮切りに、松江駅前の「煎(せん)」、宍道湖畔の「enun(縁雲・えんうん)」など、民間事業者の皆様によるコワーキングスペースが相次いでオープンしました。さらに、スタートアップ段階の新サービスや新製品の実証をサポートするプログラム「MIX PoC(ミックスポック)」を創設し、市内に立地するベンチャー企業2社を採択して支援を行うなど、起業・創業に向けた環境整備が着実に進んでいます。

こうした動きをさらに加速するため、今年1月末に、産学官金の連携による支援組織「MATSUE起業エコシステムコンソーシアム」を設立したところであり、今後、スタートアップの資金調達やプロモーションを含む伴走支援の仕組みを構築するなど、地域経済の持続的な発展に向けて、「オール松江」で取り組んでまいります。

新庁舎オープンと市役所のデジタル化の促進

第二に、市役所新庁舎のオープンと、市役所の利便性向上・利活用の推進です。

いよいよ今年5月の大型連休明けに、新庁舎の第一期工事部分が新築オープンします。平成28年に新庁舎の整備方針を明らかにしてから7年、松江らしい落ち着きのあるデザインと機能性を備えた新庁舎が姿を現してきました。

市民の皆様の暮らしを守る防災の拠点として免震構造を採り入れたほか、太陽光や雨水などの自然エネルギーを活用した「環境配慮型」の庁舎としています。

今月末には、市民の皆様、民間事業者の皆様を中心に参加者を幅広く募り、庁舎の利活用プランを検討するワークショップを複数回開催するとともに、令和5年度には、ワークショップで検討されたプランを実践して検証する「新庁舎みんなのトライアル」に取り組みます。

加えて、新庁舎の稼働に合わせ、「みんなにやさしいデジタル市役所計画」に基づく、市役所のデジタル化を進めてまいります。

新しい庁舎の「顔」となる窓口エリアでは、転入転出時の異動届や住民票などにかかる交付申請書の記載を不要とする「書かなくて済む窓口」をスタートし、手続きの簡略化と待ち時間の短縮を図ります。

さらに、庁舎内にはWi-Fi環境を整備して、訪問された方が無料で接続できるネットワークを確保すると同時に、モバイル端末を活用した行政サービスの提供や、庁内会議のペーパーレス化を促進してまいります。

エネルギー政策と「SDGs」の達成に向けた取組

第三に、環境負荷の低減に資するエネルギー政策と、「SDGs」の達成に向けた取組の推進です。

先般、閣議決定された「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」では、エネルギー安定供給の確保を前提とした、省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの主力電源化、原子力エネルギーの活用などが示されています。

本市は、昨年2月に、島根原子力発電所2号機にかかる再稼働の事前了解を表明しましたが、住民の皆様の安心と安全が最優先であることは論を待たず、今後もそれが確実に担保されるよう、国や電力事業者に求めてまいります。

また、今年3月に策定する「再生可能エネルギービジョン」に基づき、市有施設や松江城周辺の観光施設における再生可能エネルギーの導入などを進め、「国際文化観光都市・松江」ならではの「脱炭素モデル」の構築を図ります。山陰合同銀行、中国電力のほか、分野横断的に事業者の皆様と連携して、環境省が募集する「脱炭素先行地域」の選定をめざしてまいります。

そして、同時に、世界共通の持続可能な開発目標「SDGs」について、内閣府による「SDGs未来都市」の認定取得を目標に置いて、本市の取組を積極的に推進してまいります。

昨年9月には、法政大学の川久保俊教授、島根大学の松本一郎教授に「SDGsアドバイザー」に就任していただき、SDGsの達成に資する取組の具体化を図っているところです。

「『水の都・松江』の豊かさを実感できること」を実現すべき価値と捉え、自然や温泉、「食」などの「癒し」をテーマとする「ヘルスツーリズム」や、海藻や水草による脱炭素化をめざす「ブルーカーボン」などのプロジェクトを紐づけることで、持続可能な松江を切り拓いてまいります。

「将来のまちのかたち」新たな時代に応じたまちづくり

令和5年度において、以上の施策に力点を置いて取り組んでまいりますが、これら施策を実現するための土台となる「将来のまちのかたち」については、昨年度から検討を進めてまいりました。

松江市総合計画「MATSUE DREAMS 2030」では、「コンパクト・プラス・ネットワーク」の構築による「市域内のバランスのとれた発展」をめざすこととしており、そのための重要な手段である土地利用制度の考え方について、昨年6月に松江市都市計画審議会での審議を開始し、土地利用規制による効果の検証、制度の異なる他自治体との比較衡量、耕作放棄地や市街地空洞化の現状把握などを含む多面的な検討を図っております。

また、市民の皆様、民間事業者の皆様、商工団体・社会福祉法人など地域の皆様を対象とする、意見聴取やアンケート調査、シンポジウムを通じた現状とニーズの把握を行い、議員の皆様にもご意見を伺ってまいりました。

その中で、「市域内のバランスのとれた発展」を実現するための重要な要素として、「集落を持続するための新たな居住者の受入れ」「生活サービス機能の維持」「空き家などの既存ストックや地域資源の有効活用」といった意見や要望をいただいております。

本市として、「将来のまちのかたち」を実現するために鍵となるのは、中心市街地における賑わいの再生と、市街化調整区域における土地利用制度の再構築であるものと捉えております。

とりわけ、市街化調整区域においては、これまで緩和制度を導入し拡充措置を繰り返し講じてまいりましたが、見直しを重ねるたびにルールが複雑化し、分かりにくく使いにくい制度となっています。また、人口減少対策や地域活性化といった観点で、緩和制度による効果が明らかに認められる状況には至っておらず、土地利用制度の再構築が必要な状況にあるものと考えております。

こうした認識に基づき、松江市都市計画審議会での審議結果や多方面からいただいた意見を踏まえたうえで、本市が魅力あるまちとしてさらなる発展を遂げるため、土地利用の秩序を保ちつつも、昭和45年に導入した「線引き制度」に依らない土地利用制度の運用に向けて踏み出すことを決断いたしました。

今後、令和8年度中の新制度への移行を目標に、国、県、関係自治体との協議、都市計画税の取扱いや農業振興策にかかる検討など、本市を挙げて横断的な議論を重ねるとともに、市民の皆様、関係者の皆様に丁寧に説明を行ったうえで、「線引き制度」に依らない新たな土地利用制度の構築を進めてまいります。

ここからは、松江市総合計画「MATSUE DREAMS 2030」に掲げる「5つの柱」に沿って、令和5年度に推進する具体的な施策について申し上げます。

(1)しごとづくり

1つ目の柱は、地域経済を「コロナ禍の回復フェーズ」から「アフターコロナの成長フェーズ」へ転換するとともに、本市の魅力ある資源を磨き、新たな価値の創造をめざす「しごとづくり」です。

変化に強い企業づくり

感染症の脅威やエネルギー危機など、社会情勢の改変に柔軟に対応できる、「アフターコロナを見据えた変化に強い企業づくり」に取り組みます。事業者を取り巻く社会経済環境の変化を的確に捉えて、「生産性向上・新市場開拓」「新ビジネス創出」などの支援メニューを充実させ、事業者の皆様の発展を強力に後押ししてまいります。

海外との産業連携の促進

また、海外との産業連携を促進してまいります。

昨年10月には中海・宍道湖・大山圏域市長会として、台湾・台北市との交流促進にかかる覚書を締結し、今年1月には経済団体の皆様とともに、また今月は宿泊・観光関連事業者の皆様とともに台湾を再訪し、企業連携やインバウンド観光など経済交流に向けた足掛かりを創ってまいりました。

令和5年度は、相互のニーズを踏まえた具体的な連携案件の発掘に努め、さらなる関係の深化を図ってまいります。

さらに、台湾に加えて、かねてより親交のあるインドや、今後の関係構築が期待される米国(アメリカ)にもアプローチすることを計画しています。このうち、米国(アメリカ)に関しては、本市が進める「Ruby City MATSUE Project」や「MATSUE起業エコシステム」をさらなる発展に導くため、「シリコンバレーへのゲートウェイ」となることを念頭に置いており、その実現可能性や連携方策について検討を図ってまいります。

中心市街地の活性化と職人商店街

加えて、本市の中心市街地では、こんなに面白い商店街って、松江にしかない」をめざし、商店街に点在する、お茶、和菓子、出雲そば、漆器、陶器など、歴史と伝統のある誇れる魅力をつなぎ、「匠の技」に触れ、「ものづくり」を体験できる「職人商店街」の創造を推し進めます。

中心市街地の活性化を企図する、民間のまちづくり会社とも連携しながら、空き家・空き店舗の活用も進めてまいります。

また、令和5年度には、「職人商店街」につながる職業体験イベントを開催します。和菓子職人によるデモンストレーションや八雲塗りの絵付け体験をはじめ、本市の伝統工芸の魅力をこどもたちに伝えてまいります。

商店街の中核に位置する、旧日銀松江匠工房「カラコロ工房」も生まれ変わろうとしています。松江の「豊かな日常」を体感できる場所として、地元産品を中心としたマルシェ、ものづくり体験施設、フードセンターの3つの機能を併せ持つ複合施設として、令和6年度のオープンを予定しています。

さらに、「職人商店街」には、日本三大蕎麦として名高い「出雲そば」を提供する飲食店も欠かせません。昨年1月に立ち上げた「松江そば文化ブランド化推進協議会」では、松平不昧公が「そば懐石」を考案したことにちなんで、新商品「松江松平そば」を開発され、今月11日にお披露目して以降、同協議会の参加店舗において販売しています。

農林水産業の振興

こうした新商品の開発に関しては、昨年11月に、飲食店情報サイト大手の「ぐるなび」と、「特産品ブランディング業務協定」を締結しました。「ぐるなび」の持つノウハウや知見を活かしながら、市産品のブランディングやふるさと納税の返礼品開発を進めるとともに、愛着を感じる地元食材の「地産地消」にも取り組んでまいります。

農業においては、就農者の高齢化や担い手不足、生産資材や原材料の価格高騰など、事業環境が厳しさを増す中、農業用ドローンやハウス内の環境を統合管理するシステムなど、先端技術を活用した「スマート農業」の導入促進に向けて、就農者へのアンケート調査を行い、地域ごとの農業の特徴を把握・分析し、対応方針を立案してまいります。

また、新庄、西谷上(にしだにかみ)、古曽志、大野地区の圃場整備を進め、農業の「担い手」となる農業法人への農地集積を図るとともに、タマネギやかぼちゃなど高収益作物の導入により、経営の安定化、地域間競争力の強化に努めてまいります。

林業については、森林環境譲与税を活用して、森林整備の促進、担い手の確保・育成や生産性向上につながる高性能林業機械の導入を支援するなど、森林の保全と林業の成長産業化を図ってまいります。

水産業については、昨年4月に、アワビの種苗生産と陸上養殖の実用化に向けた技術交流に関して覚書を締結した、青木あすなろ建設および玉川大学との共同研究を進め、高付加価値商品の開発を念頭に、アワビの安定的な生産と種苗放流に取り組みます。併せて、藻場の保全と水産資源の回復を図るため、漁礁を設置して藻場を造成するなど、持続可能な循環型漁場の構築をめざしてまいります。

Authentic Japan MATSUE ホンモノの日本があるまち松江

次に、「国際文化観光都市」である松江の魅力に磨きをかける観光振興について、「世界中から松江に人が集まる」の実現に取り組んでまいります。

先般策定したばかりの「MATSUE観光戦略プラン」に基づき、観光資源の高付加価値化、旅行者が快適に過ごせる環境づくりと利便性の向上、その魅力発信に注力するとともに、観光戦略を持続的・安定的に実行できる体制の構築をめざします。

令和5年度は、松江城における、春の「お城まつり」、夏の「国宝松江城ライブ」、秋の「松江水燈路」、年間を通じた「武者によるおもてなし」など、松江城の魅力をフル活用して、国内外の観光誘客に力を入れてまいります。

また、「水の都・松江」の価値に着眼した「ヘルスツーリズム」や、「日本夕陽百選」に選ばれる「宍道湖の夕日」のブランド化に、官民が一体となって取り組みます。

さらに、近隣自治体にも世界に誇れる観光資源があふれています。中海・宍道湖・大山圏域はもとより、隠岐・雲南・境港などと広域的に連携し、互いのユニークな地域資源をかけ合わせて、エリア全体の魅力を高めてまいります。

インバウンドの本格的な再開を視野に入れ、「牡丹」を契機に物産・観光面で交流の進む台湾、古城文化に親和性があり歴史や伝統に造詣の深いフランス、世界経済の中心地でトレンドの発信拠点である米国(アメリカ)を重点市場に位置付け、観光プロモーションや商談会を通じたPRに励んでまいります。

松江水郷祭

そして、「夏の風物詩」として長きにわたって市民の皆様に親しまれ、毎年、本市最大の人出で賑わう「松江水郷祭」の花火については、行政・経済界・地域の代表者をメンバーとする「松江水郷祭推進会議」において、持続可能な開催モデルを検討しているところです。

市民の皆様が楽しめ、誇れる祭りとして続けていくことが大切であり、そのために財源を安定的に確保すること、賑わいの創出と観光誘客によって地域経済の活性化を図ること、将来日本有数の花火大会に育てることなどを念頭に置いて、官民連携の下で検討を進めてまいります。

(2)ひとづくり

2つ目の柱は、未来を担うこどもたちを大切に育て、誰もが個性と可能性を伸ばすことができる地域社会の形成をめざす「ひとづくり」です。

「こども」の視点に立った「子育て」環境の充実

こどもたちの健やかな成長を支えるとともに、安心してこどもを産み育てることのできる環境を創るため、令和5年度から、現在の「子育て部」を「こども子育て部」に名称変更・組織再編し、こどもの視点に立った子育て政策を展開します。

令和6年度の児童福祉法の改正施行により、「こども家庭センター」の設置が努力義務化されますが、本市では、この法施行より1年早い今年4月に同センターを新設します。乳幼児健診にかかる対応と児童虐待に関する相談の窓口を一本化するなど、すべての子育て世帯、妊産婦、こどもへのきめ細やかで切れ目のない支援を行ってまいります。

また、今年1月からスタートした「出産・子育て応援事業」を令和5年度も継続し、妊娠届け出時からすべての妊婦・子育て家庭に寄り添い相談に応じる「伴走型相談支援」、妊娠届け出と出生届け出後にそれぞれ5万円を給付する「経済的支援」を行うほか、産後ケア事業の対象年齢の引き上げと利用日数の拡充など、妊娠期から出産・子育て期まで一貫した支援に取り組みます。

さらに、令和5年度は、「いい育児の日」とされる11月19日を本市の「子育ての日」として、新庁舎のテラスを活用したマルシェやワークショップ、先ほど触れた職業体験イベントを初めて開催し、親子で楽しめる時間と場所を提供する予定です。

こうした取組を通じて、ここに生まれてよかった、ここで育ててよかった」と市民の皆様に実感していただけるよう、努めてまいります。

ふるさと松江から、夢を実現し未来を切り拓く

こどもたちの教育については、「松江市教育大綱」における基本理念「DREAMS from MATSUE(ドリームズフロムまつえ)~ふるさと松江から、夢を実現し未来を切り拓く~」に基づき、児童・生徒一人ひとりが、夢の実現に向けて自ら考え行動する力を持ち、ともに支え合って未来を切り拓くことのできる環境を整えてまいります。

令和5年度は、ICTを用いた学習機会の充実化に向けて、校内ネットワークの高速化を図るとともに、教員向けにICTの効果的な活用事例を共有する研修を企画します。また、教職員が授業と校務の双方をこなせるタブレット端末を導入して事務負担の軽減を図るなど、引き続き必要なインフラ整備も進めます。

さらに、児童・生徒がグローバルな視点・視野を養い、一人ひとりの将来の可能性を広げられるよう、英語のデジタル教材を積極的に活用するとともに、外国語指導助手の指導の下で、多様な文化や価値観に触れる機会を創出してまいります。

市立皆美が丘女子高等学校では、複数の私立外国語大学の授業体験や、大学生との交流の機会を設けることで、外国語の学習意欲を高めてまいります。

誰もがその個性と能力を発揮できる地域社会へ

児童・生徒のみならず、市民誰もがその個性と能力を発揮できる地域社会の形成にも努めてまいります。

障がいのある方が、それぞれの希望・能力に応じて就労できるよう、島根労働局や松江商工会議所などと連携し、事業者の皆様に障がい者雇用にかかる理解を促し、求人の増加や募集職種の拡大へつなげてまいります。

また、「重度障がい者就労支援特別事業」の対象を拡充し、就業時の身体介助支援も行えるようにすることで、障がいのある方が活躍できる環境を整えてまいります。

地域の拠点施設整備

加えて、豊かな地域社会を形作る起点として、今年6月、東出雲町内に、公民館、支所、図書館、子育て支援センター、地域包括支援センターの5つの機能を合わせ持つ「ヨリアイーナ東出雲」が開館します。乳幼児から高齢者まで、地域の皆様が「寄り合う」場として活用されることを期待しております。

また、5月には、島根支所が島根公民館の東隣に移転し、支所機能と地域づくり活動の拠点性を兼ね備える複合施設としてオープンするほか、7月に着工する竹矢公民館の建て替えでは、施設の脱炭素化に向けて太陽光パネルを設置し、内装には地元産材を使用することを予定しています。

いずれの施設も、地域に暮らす皆様が集う拠点となり、それぞれの地域のさらなる活性化がもたらされるよう努めてまいります。

(3)つながりづくり

3つ目の柱は、本市固有の歴史・伝統・文化・芸術・スポーツの魅力が、人と人とのつながりを創出する「つながりづくり」です。

歴史・伝統・文化・芸術によるまちづくりの推進

「国際文化観光都市」である松江には、神話の時代から唯一無二の歴史の積み重ねがあり、先人が残してくれた、世界に誇るべき豊かな伝統と文化にあふれています。

松江市の花である「椿」は、1,300年前に編纂された「出雲国(いずものくに)風土記」において、「意宇郡(おうぐん)」や「嶋根郡(しまねぐん)」の章に登場するとともに、江戸時代には、松江藩7代藩主・松平不昧公が茶室に生ける「茶花」として好んだとされています。

その「椿」にゆかりのある日本全国の自治体が集う「全国椿サミット」が、令和6年3月に20年ぶりに本市で開催されます。松江城内にある「椿谷」をめぐるツアーや、「椿」にまつわる伝統工芸品や「茶の湯文化」を紹介し、松江の魅力を全国に発信する機会にしてまいります。

また、本市のシンボルである国宝松江城の本来的な価値や、市民の皆様の愛着を高めることを目的に、同じく国宝天守を有する姫路城、彦根城、犬山城、松本城と一体となって、「近世城郭の天守群」として、ユネスコ世界文化遺産の登録をめざします。

さらに、本市が持つ魅力の全国への発信を企図して、島根県出身の作家・田渕久美子さんの著書で、明治時代の松江を舞台にした小説「ヘルンとセツ」のドラマ化をテレビ局に要望してまいります。

芸術文化活動の拠点である「松江市総合文化センター」については、令和6年4月の全面リニューアルに先立ち、併設する「市立中央図書館」を今年10月にオープンします。誰もが利用しやすく居心地の良い空間となるよう、施設のコンセプトを、「ライフ」と「ライブラリー」を掛けた「ライフラリー」という造語で表現し、市民の皆様に愛される図書館をめざしてまいります。

スポーツを起点としたまちづくり

こうした文化振興と同様に、スポーツを起点としたまちづくりにも取り組み、選手、観客、それを支える地域が、「感動」と「情熱」によってつながるまちを創ります。

本市に拠点を置くプロスポーツチームや、国内外で活躍する地元出身選手を応援し、「スポーツが松江の存在感を高めた」を実現してまいります。

なかでも、プロバスケットボールの島根スサノオマジックは、B1リーグや天皇杯で日本一を争うなど、目覚ましい活躍を続けており、夢や希望を与えてくれる、松江市民の誇りとなっています。チームの本拠地であるホームアリーナについては、「2026-27シーズン」から適用されるB1リーグの新基準に従って、5,000席以上の観客席数やスイート・ラウンジの設置などの要件が課されることとなります。チームオーナーであるバンダイナムコエンターテインメントをはじめ、関係者の皆様と緊密に連携し、本市として速やかに検討を進めてまいります。

また、2030年には、「島根かみあり国スポ・全スポ」が、昭和57年のくにびき国体以来、48年ぶりに島根県で開催されます。各競技会場の決定を受けて、中央競技団体の視察受入などの準備を進めるとともに、島根県スポーツ協会など関連団体と連携し、有望な選手の発掘・育成に取り組んでまいります。

加えて、こどもから大人まで、世代を問わずスポーツを楽しめる環境を整備します。

令和5年度は、中海湖畔の上宇部尾町(かみうべおちょう)に設置予定の多目的広場「中海スポーツパーク」の造成に着手し、芝生のグラウンドを、サッカーやグラウンドゴルフをはじめとする多彩な用途に利用できるよう検討してまいります。

なお、「中海スポーツパーク」の新設を含め、中海周辺地域の振興計画をまとめた「中海振興ビジョン」を、今年3月に策定することとしており、中海固有の豊かな自然環境や地域資源を生かした活気あるエリアの形成をめざしてまいります。

(4)どだいづくり

4つ目の柱は、市民の皆様の安心・安全な暮らしを守るため、健康・医療の充実や、都市基盤・社会資本の整備に取り組む「どだいづくり」です。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止と医療提供体制の確保

市民の皆様の健康を支え、安心して安全に生活できるよう、新型コロナウイルス感染症の拡大防止と医療提供体制の確保に継続して取り組んでまいります。

感染症予防のためのワクチン接種については、国が定める方針に応じて必要となる接種体制を迅速に構築し、市民の皆様にタイムリーにわかりやすく情報提供を行うとともに、希望される方が速やかに接種を受けられるよう体制を整えてまいります。

HPVワクチン接種「9価ワクチン」の定期接種化

一方で、子宮頸がんなどを防ぐためのHPVワクチンの接種に関して、従来のワクチンよりも優れた感染予防効果があるとされる「9価HPVワクチン」が、今年4月から定期接種に加わります。対象となる方への個別の通知に加えて、SNSを活用した周知を図ってまいります。

誰もが集い楽しめる公園の整備

また、市民の皆様が健康の維持・増進を図るため、憩い集い楽しめる公園づくりも進めてまいります。

本市内にある約400の公園について、その立地や規模に応じたニーズを把握するため、公園を利用する皆様へのアンケートを実施しております。このアンケート結果や、白潟公園と宍道総合公園・古墳の森で実施した社会実験での意見・感想などを踏まえて、本市における公園のあり方を整理してまいります。

さらに、老朽化などによって使用できなくなっている遊具の解消に向けて、迅速に修繕対応できる体制を整え、こどもたちが楽しく安全に遊べる場として適切に管理してまいります。

宍道湖畔の千鳥南公園と末次公園については、新庁舎の建設・稼働に合わせてその再整備を検討し、市民の皆様の憩いの場、活動の場として活用してまいります。

歩きたくなるまちなみ創出

市内中心市街地については、昨年3月に、「車中心から人中心のまちなかへ」をコンセプトに掲げた「中心市街地エリアビジョン」を策定し、JR松江駅と松江城を結ぶ、いわゆる「L字ライン」において、賑わいの動線づくりを進めます。

そのためのポイントとなる、JR松江駅前の広場や松江城至近の大手前駐車場に期待する機能・役割について、市民の皆様や関係者の皆様に意見を伺い、城下町の魅力向上やまち歩きの促進といった観点から検討してまいります。

新たなモビリティサービスの実装

また、持続可能なまちづくりに欠くことのできない、公共交通の利便性向上にも取り組んでまいります。

今年4月には、人工知能を活用したいわゆる「AIデマンドバス」が、八束町全域、美保関町宇井地区および境港市において運行をスタートします。

時刻表や路線ルートを持たず、スマートフォンや電話での予約に応じて、エリア内に細かく設定されたポイントからバスに乗降し、最適なルートで目的地まで移動することができます。県境をまたぐ「AIデマンドバス」の運行は全国初であり、本エリアでの運行実態を踏まえて課題を洗い出し、必要な改善を図ったうえで、導入エリアの拡大をめざしてまいります。

道路や河川などの都市基盤整備

道路や河川などの都市基盤に関しては、基幹路線となる揖屋馬潟線の整備、市道西尾大井線をはじめとする主要路線の改良、その他橋梁などの長寿命化に取り組むとともに、高規格道路・境港出雲道路の一部となる松江北道路の整備、大橋川の改修などについて、国や島根県との連携の下、着実に進めてまいります。

加えて、令和3年4月に発生した、島根町加賀での火災によって消失した住宅地を復興するための道路改良を着実に進めるほか、近年の気候変動や地球温暖化によって、局地化・激甚化・頻発化する自然災害の被災箇所の復旧を速やかに進め、災害に強いまちづくりに努めてまいります。

原子力災害対策と地域防災力の強化

昨年11月には、2日間にわたり、令和元年度以来の広域的な避難を伴う原子力防災訓練を実施し、初の自家用車での避難訓練も行いました。今回の訓練を生かし、国や島根県、近隣自治体と連携して、避難計画を含む原子力災害対策の実効性を高めてまいります。

また、災害時に必要となる消防体制を充実化し、地域防災力を強化するため、消防団員の処遇の改善を図り団員数の確保に努めてまいります。

持続可能な資源循環型社会の形成

地球温暖化や資源の枯渇など、世界規模の環境課題への対応も急務となっており、天然資源の循環型社会を形成する必要があります。

昨年4月に、人気レゲエグループ「湘南乃風」の「若旦那」こと新羅慎二(にら・しんじ)さんに、「まつえ環境クリエイティブディレクター」に就任していただき、若手職員を中心に、資源循環の大切さ、楽しさ、魅力を発信する「まつえ循環プロジェクト」を立ち上げました。

資源のリサイクルを体験できる講座、生産者の顔が見える野菜や加工品の販売、無農薬や有機栽培の食材を使った飲食店のブースが並ぶ「まつえファーマーズマーケット」の開催、腐葉土や野菜の切れ端から堆肥を作る「タンスコンポスト」の開発など、「サステナブルな暮らし」を提案し、「日本が誇る『環境主都まつえ』」を実現してまいります。

「市役所って、ほんと頼りになる」の実現へ

今年5月には、新庁舎が稼働します。このタイミングに合わせて、本市の情報発信と広聴機能を拡充し、「市役所って、ほんと頼りになる」と、市民の皆様に実感していただけるよう、取り組んでまいります。

今月1日には、本市ホームページを全面的にリニューアルし、使いやすく情報が入手しやすい構成や機能を整備したほか、令和5年度からは、X(旧Twitter)やInstagramに加え、市公式LINEの運用をスタートします。多様な媒体・手段を使って、市民の皆様にきめ細やかに、わかりやすく情報を届けてまいります。

また、オンラインアンケートを積極的に活用して、政策立案につなげるなど、市民の皆様に寄り添う市政を実践してまいります。

(5)なかまづくり

5つ目の柱は、「中海・宍道湖・大山圏域」の広域連携による「なかまづくり」です。

新型コロナウイルス感染症の影響により停滞していた、台湾・インドなど諸外国との交流や、高速交通ネットワークの整備に向けた取組を強化し、圏域の一体的な発展を導いてまいります。

特に、昨年10月に台湾・台北市と締結した「交流促進覚書」に盛り込んだ連携政策の実現に向けて、圏域内企業と台湾企業とのビジネスマッチングを支援してまいります。また、インド・ケララ州との経済交流の拡大をめざし、ケララ州が開催する「Japan Mela(ジャパンメラ)」への出展支援などを通じて、圏域内企業の海外進出の機会を創出してまいります。

圏域インフラの整備促進においては、境港出雲道路を含む高規格道路ネットワーク「8の字ルート」の早期実現と、それを生かしたまちづくりの方向性について、5市による「中海・宍道湖・大山圏域8の字ルート研究会」が発足し、議論を重ねてまいりました。令和5年度は、圏域5市の官民が一体となって、高規格道路の整備に向けた機運の醸成と、国への要望活動を進めてまいります。

おわりに

以上、来たるべき令和5年度に取り組む主要施策について、説明させていただきました。

令和5年度は、コロナ禍を耐え忍び、蓄えてきた力をバネにして、大きく動き出す「飛躍の年」にしたいと考えております。

松江市総合計画「MATSUE DREAMS 2030」に掲げる将来像「夢を実現できるまち 誇れるまち 松江」の創造に向けて、本市の総力を挙げて、積極果敢にチャレンジしてまいりますので、議員の皆様、市民の皆様には、引き続きお力添えをいただきますようお願い申し上げまして、令和5年度の施政方針とさせていただきます。

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