令和8年度市長施政方針
はじめに
松江市議会2月定例会の開会にあたって、令和8年度の施政方針をお示しするのに先立ち、今年1月6日に発生した、島根県東部を震源とする最大震度5強の地震により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
本市では、地震発生直後に災害対策本部を設置し、関係機関との緊密な連携の下、道路、学校、観光施設、島根原子力発電所などの被災状況を正確に把握し、市民の皆様の安心と安全を確保するため、全力を尽くしてまいりました。
この地震により、家屋の損傷など被害を受けられた方には、必要な支援を確実に行うこととしております。また、地震発生後、旅館やホテルの宿泊予約のキャンセルが相次いだことを踏まえて、市内の観光施設・宿泊施設の通常営業をアピールし、風評被害の払拭と予防に努めてまいります。
今回の経験を踏まえて、本市は、防災力ならびに災害発生時の対応力を高めるべく不断に取り組んでまいりますので、議員の皆様、市民の皆様には、ご理解・ご協力いただきますようお願いいたします。
それでは、本定例会に、令和8年度当初予算を提案させていただくにあたり、新年度の市政運営に臨む私の考えと決意を申し述べます。はじめに、特に重視したい3つの視点について述べさせていただきます。
次代へつなぐ持続可能なまちの基盤づくり
1点目は、「次代へつなぐ持続可能なまちの基盤づくり」です。
冒頭、触れさせていただきましたが、1月6日に発生した地震により、道路・橋梁、学校、病院、住宅、電気・ガス・通信など、私たちの生活や社会経済活動に欠かせないインフラが、継続して安全に機能することの重要性を改めて実感しました。
将来にわたり市民の皆様の暮らしを守り、松江市総合計画「MATSUE DREAMS 2030」に掲げる「市民の実感」のひとつ「『何があっても松江は大丈夫!』って思う」を実現するため、必要な設備投資を計画的に行うとともに、インフラの整備・運営に際して柔軟に創意工夫を凝らすことで、持続可能なまちの基盤を創り適正に維持してまいります。
そして、災害への備えのみならず、物価高騰など社会・経済の急激な変化から、日々の生活や仕事を守る役割を果たします。現在、食料品やエネルギーの価格が上昇し、とりわけ子育て世帯・高齢者世帯の暮らしや、中小・小規模事業者の企業経営に暗い影を落としています。
長引く物価高騰に対応すべく、国は「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」、いわゆる「重点支援地方交付金」を拡充し、本市には総額20億6千万円が配分される見込みとなっております。本市はこれまで、学校給食費の補助や水道料金の減免など「生活者」を支える施策を講じるとともに、省エネルギー設備の導入にかかる補助など「事業者」を支援する取組みを進めてまいりました。
さらに今般、食料品価格の高騰に対応する新たな施策として、市民の皆様に一人あたり5,000円分の2次元コード付き商品券「生活応援 おまっちぇ お買物券」をお届けするための補正予算と当初予算を提案させていただきます。市民の皆様の家計負担の軽減と、消費喚起を通じた地域経済の活性化に、同時に取り組むものとなります。なお、今後、「おまっちぇ お買い物券」の仕組みを活用することで、国の交付金などを市民の皆様に迅速にお届けできるようになることを申し添えます。
また、本市は、まちづくりと市民サービスの基盤となる、市役所新庁舎の整備も進めてまいりました。令和3年3月に着工した第1期棟が令和5年5月に完成し、その後、第2期棟工事の進捗に合わせて、各部局が段階的に新庁舎に移転しており、今年5月にいよいよ全館グランドオープンを迎えます。
新庁舎は、質の高い行政サービスを提供するための機能性・利便性を備えた、本市の「ミライソウゾウ拠点」であると同時に、週末には市民の皆様が憩い・集い・楽しめる「賑わいの拠点」として、災害時には市民の皆様の生命と安全を守る「防災の拠点」として、その機能を十二分に発揮することと確信しています。
さらに、今年4月1日には、これまで本市ガス局が運営してきたガス事業を、民間事業者へ譲渡し民営化を図ります。信頼のおける民間事業者によって安定したガス供給がなされるのに加えて、ガス・電気のセットでの提供や、水回りや鍵のトラブルに応じた「かけつけサービス」など、市民の皆様のニーズを踏まえた、利便性の高いサービスが受けられるものと期待しています。
一方、私たちの生活を支える水道について、本市では、通水から107年が経過し水道施設の老朽化が進み、近年、漏水事故も発生しています。維持管理にかかるコストが物価高騰に伴い増大する中、適切なタイミングで必要となる設備の更新や修繕を行うため、今年10月に平成27年以来11年ぶりに水道料金を値上げすることといたしました。
バス運賃についても、今年4月に30年ぶりとなる改定を予定しています。バスの運転手不足により路線の廃止や減便が相次ぐ中、同じく4月には、本市交通局と一畑バスの共同運行をスタートします。両社共通の新たな運賃制度を導入するのに併せて、市内の路線バス全線を定額でご利用いただける通学用定期券「まつえ通学フリーパス」の導入や、「川津バス停」など乗り継ぎ拠点の再整備による待合環境の改善を図り、バスの利便性を高めてまいります。
市民の皆様には、公共料金の改定により、従来よりもご負担をおかけすることとなり大変心苦しいですが、公共サービスを将来にわたり安定的に維持・継続するために必要な仕組みを整えるものですので、ご理解いただきますようお願いいたします。
加えて、日々の暮らしに欠かせない生活ごみの処理についても、本市の基幹施設である「エコクリーン松江」の改良工事に着手し、施設の長寿命化と二酸化炭素(CO₂)排出量の削減を図ることで、安定的なごみ処理の体制を確保することとしています。
こうした取組みによって、将来世代に負担を先送りすることなく、市民の皆様が穏やかに暮らすことのできる「どだい」を築き、次代に向けたまちの基盤づくりを着実に進めてまいります。
公民連携でのチャレンジによる課題解決
2点目は、「公民連携でのチャレンジによる課題解決」です。
わが国は現在、これまでに経験したことのない人口減少、少子高齢化、自然災害の激甚化といった深刻な課題に直面しています。
地球温暖化をはじめとする気候変動や、新型コロナウイルス感染症に象徴される未曽有の社会不安、AI・人工知能の急速な進歩と普及など、従来の常識やビジネスモデルが通用しない、「VUCA(ブーカ)の時代」に突入しています。不確実で複雑で曖昧なこの時代を、行政の力だけで担い支えるのは困難であり、柔軟で機動的な発想・技術・資金を有する、民間企業・大学・NPO・地域団体など、多様なステークホルダー(利害関係者)の連携が欠かせません。
本市では、「公民連携」を積極的に推進することによって、様々な主体が得意な知見を持ち寄り、役割を分担しながら一丸となって地域課題の解決に取り組んでまいります。
その一例として、JR松江駅前の再開発にあたっては、本市と松江商工会議所が共同で設置した「松江駅前デザイン会議」において、「公民連携」の下で協議が進められ、交通結節機能、交流・防災機能、サービス機能などを配置した「松江駅前デザイン案」が取りまとめられました。今後、議員の皆様、市民の皆様と、デザイン案にかかる検討の進捗について共有を図り、駅前再開発を着実に進めてまいります。
他方で、北公園や県立プール跡地を含む、松江市総合体育館周辺エリアについては、昨年3月に策定した「総合体育館周辺エリア未来ビジョン」の実現を図るべく、スポーツ・商業・遊びをテーマにした賑わいの場の創出を念頭にサウンディング調査を行い、民間事業者の参入意欲やそのために必要な条件を確認しているところです。
さらに、昨年10月には、ソフトバンクなどが組織する民間コンソーシアムとの協働によって、JR松江駅とテクノアークしまねを結ぶ、全国でも先駆的な自動運転バスの実証運行を開始しました。自動運転は、公共交通における慢性的な運転手不足の解決策になり得るものと期待しており、令和9年度に、特定の条件下で無人運行が可能となる「レベル4」の認可取得を目指し、早期の社会実装に向けて取り組んでまいります。
また、国が進める、電力・通信インフラの整備による「ワット・ビット連携」に呼応する形で、本市内に、技術開発型データセンターを中核とする産業集積を目指す「Green × Digital Town Project(グリーンデジタルタウン・プロジェクト)」を、先日2月13日に立ち上げました。電力・通信業界、教育・研究機関、金融機関、経済団体の皆様とともに、本市の特性を生かした地域産業の活性化を図ります。
こうした「公民連携」によるチャレンジを積み重ねることで、本市は「課題解決先進市」の歩みを進め、全国地方都市のロールモデルとなることを目指してまいります。
自然・歴史・伝統文化の磨き上げと未来への継承
3点目は、「自然・歴史・伝統文化の磨き上げと未来への継承」です。
本市には、悠久の歴史の中で培われた、宍道湖・中海、国宝松江城、国宝神魂神社、史跡小泉八雲旧居、月照寺、茶の湯文化をはじめとする、「松江ならでは」の地域資源が溢れています。先人が大切に守り今日まで受け継いできた「財産」を、市民の誇りとしてさらに磨き上げ、次世代へと引き継いでいかなければなりません。
本市のシンボルである国宝松江城については、令和8年度より、昭和30年以来およそ70年ぶりとなる「令和の大修理」に着手します。屋根瓦や壁板など外観を中心とする修理を確実に進めるべく、令和8年度には実施設計、9年度からは工事に取り掛かり、令和12年3月の完工に向けて取り組んでまいります。
さらに、美保神社周辺に残る歴史的な町並みについて、令和8年度に、文化庁による「重要伝統的建造物群保存地区」の選定を目指します。地域に息づく文化財の価値を高めるため、計画的に整備を行い、歴史的資源を生かしたまちづくりを進めます。
加えて、今年は、ラフカディオ・ハーンが日本国籍を取得し「小泉八雲」に改名してから130年の節目であり、改めて、八雲の顕彰と観光プロモーションに取り組みます。5月には、市役所新庁舎1階の多目的スペースに、NHKの連続テレビ小説「ばけばけ」のドラマセットを再現し、衣装や小道具と合わせて、その世界観を体感できるスポットが誕生する予定ですので、ご期待ください。
こうした地域資源を磨き上げながら、国内外からの観光誘客を念頭に置き、効果的なコンテンツを活用した情報発信に取り組んでまいります。海外重点市場と位置付けるフランス、アメリカ、台湾へのトップセールスを通じて、自然・歴史・伝統文化を生かしたインバウンド誘客を図るとともに、昨年7月にデビューした、本市公式PRキャラクター「おまっちぇ」を活用したシティプロモーションによって、本市の魅力を広く発信してまいる所存です。
以上、令和8年度の市政運営にあたり、私が重視したい3つの視点について申し上げました。
次に、松江市総合計画「MATSUE DREAMS 2030」に掲げる「5つの柱」に沿って、令和8年度に推進する施策についてご説明いたします。
(1)しごとづくり
1つ目の柱は、起業や新しいビジネス展開を志す人のチャレンジを後押しすることで、持続可能な地域経済の発展・成長を目指す「しごとづくり」です。
起業支援と企業拠点整備を通じた地域産業の活性化
本市では、地域に新たな価値を生み出す人材や企業を育てるため、起業支援の仕組みを進化させています。
令和5年1月に発足した「MATSUE起業エコシステムコンソーシアム」では、産学官金が連携し、起業家の成長段階に応じた伴走支援や、実践的な学びが得られる場づくりに力を入れてきました。特に、ビジネスコミュニティ「MIX」には、参加者が互いに刺激を受けてモチベーションを高め合いながら学びを深める風土が育っており、これまでに200回を超えるイベントの開催を通じて、多くの「挑戦者」が新たな一歩を踏み出すきっかけを得ています。これらの結果、令和4年度から6年度までの3年間で、4社の起業・創業が実現し、全国・世界へと羽ばたいています。
また、本市ゆかりのプログラミング言語「Ruby」を核とする「Ruby City MATSUEプロジェクト」は、本市の発展に向けた産業振興のドライバーとなることを目標に、本市に在住するRuby開発者・まつもとゆきひろさん全面協力の下で、平成18年にスタートしてから今年で満20年を迎えます。これまで、JR松江駅前の「松江オープンソースラボ」の開設や、「しまねOSS協議会」「Ruby Association」をはじめとする多様なコミュニティとの連携、島根大学・松江高専との協働による高度IT人材の育成などに取り組んだことで、40社以上のIT企業が市内に立地・集積しています。令和6年3月には、「Ruby City MATSUE 2.0」へバージョンアップを図り、事業化支援の充実や、アメリカ・台湾など海外のRubyコミュニティとの連携を強化することで、「Ruby City MATSUE」のブランド力を高めています。
さらに、本市産業発展の「起爆剤」として、新たな企業団地の整備に取り組みます。松江だんだん道路の川津インターチェンジから至近の中尾地区に、令和9年中の分譲開始を目指して、開発面積約11ヘクタールの企業団地を整備する計画です。令和8年度は、土地造成に向けた詳細設計や埋蔵文化財調査を進める予定であり、将来の雇用創出と地域産業の発展を導いてまいります。
加えて、先に述べた「Green × Digital Town Project(グリーンデジタルタウン・プロジェクト)」における、技術開発型データセンターの誘致を通じて、デジタル社会を支える、最先端産業クラスターの形成を目指します。脱炭素化に寄与する、持続可能な産業基盤の構築に向けて積極的に取り組んでまいります。
「世界中から松江に人が集まる」観光施策の推進
次に、「世界中から松江に人が集まる」観光施策の推進についてです。
ここ半年にわたり、NHKの連続テレビ小説「ばけばけ」による観光面での波及効果が顕著に表れており、昨年12月の「小泉八雲旧居」の入館者数は前年同月と比べておよそ5倍、「小泉八雲記念館」も3倍を記録しました。また、ドラマに登場する月照寺、城山稲荷神社、八重垣神社などの名所を訪れる観光客も大幅に増加しています。このブームを一過性のものとせず、持続的な誘客につなげることが、本市における観光振興の「鍵」となります。
本市は、令和5年2月に策定した「MATSUE観光戦略プラン」のメインコンセプトとして、「Authentic Japan “MATSUE”」(ホンモノの日本があるまち「松江」)を掲げています。固有の伝統文化や自然環境を生かし、世界中の人たちが日本古来の素晴らしさを感じられるまち・松江を目指すものであり、「ばけばけ」の放送は、その魅力を国内外に発信する千載一遇のチャンスと捉えています。
この好機を確かな成果へとつなげるため、令和8年度は、国宝松江城をプロジェクションマッピングで演出する「ナイトタイム観光」を展開し、夜の松江に新たな魅力を創出いたします。
さらに、昨年12月に、中国地方で初めて導入した宿泊税を最大限有効に活用し、「国際文化観光都市」としての価値を高めるとともに、将来にわたり持続可能な観光地として発展するための施策を推進してまいります。特に、観光地域づくりの「司令塔」となる松江観光協会は、昨年3月に観光地域づくり法人(DMO)に登録され、順次体制強化を進めているところです。専門的な知識やスキルを持つ人材によるマーケット分析や商品企画によって、観光資源のブランディングや観光施策のブラッシュアップを図ります。併せて、周遊を促すためのデジタルマップの導入や、昨年11月に始めた電動シェアサイクル「ラフチャリ。」による二次交通の補完など、受入環境の整備にも取り組み、持続可能な観光地域づくりを推進してまいります。
賑わいと魅力のある商店街の創出
続いて、賑わいと魅力ある商店街の創出について、これまで本市では、脈々と受け継がれてきた「松江ならでは」の伝統的なものづくりを支える「匠の技」を、見て・触れて・体験できる「職人商店街」の形成に取り組んでまいりました。その結果、JR松江駅と松江城を結ぶ白潟・天神エリアを中心に、既存店舗のリニューアルや空き店舗を活用した複合施設の開設が進み、その魅力が高まっています。令和6年10月には、「職人商店街」の「北の拠点」となる「カラコロ工房」がリニューアルオープンし、今年春には、日帰り入浴もできる宿泊施設「天然温泉 湯屋天神」が新規出店するなど、中心市街地の店舗の多様化と回遊性の向上が図られています。
併せて、令和5年6月に、およそ30年ぶりに復活させた「まつえ土曜夜市」について、昨年は5月から9月まで計5回、6日間にわたって開催し、延べ18万人が訪れるなど、松江の「夏の夜の風物詩」として定着してまいりました。今後も、昼夜を問わず、多くの人が中心市街地を訪れる機会を創出し、その活性化を図ってまいります。
また、令和6年7月に、JR松江駅北口から白潟天満宮へとつながる市道鉄道北沿線を「歩行者利便増進道路(ほこみち)」に指定しました。その活用事業者に選定されたJR西日本山陰開発により「シャミネやくもロード」と命名され、ナイトマーケットが開催されるなど、新たな賑わいづくりも始まっています。
こうした施策を通じて、JR松江駅と松江城を結ぶ、いわゆる「L字ライン」の回遊性を高め、市民や観光客の皆様が「松江ならでは」のまちあるきを楽しめる空間を形作ってまいります。
農林水産業の振興と未来の担い手を育てる取組み
次に、農林水産業の振興と未来の担い手を育てる取組みについてです。
農業分野では、スマート農業の推進により作業の省力化・効率化を図ることで、生産現場の負担軽減と生産性の向上、ひいては「儲かる農業」の実現を目指しています。令和8年度からは、スマート農業機械の活用を後押しすべく、測位衛星システム・GNSS基準局の整備を支援する制度を新設し、先端技術を駆使した農業経営の実践を図ります。
さらに、本市の花である牡丹の振興にも力を入れます。生産農家やJAと連携し、生産体制の強化や販路の多様化を通じて消費拡大に取り組むことで、「松江大根島牡丹」のブランド力を高め、新たな担い手の確保にもつなげてまいります。
一方、近年深刻化する鳥獣被害への対策の一環として、生活圏内に熊などが侵入した場合の「緊急銃猟」を実施するとともに、適切な捕獲体制を整備することで市民の皆様の安心と安全を守ります。また、イノシシをはじめとする有害鳥獣の捕獲後の埋設処理について負担軽減を図るため、地元企業が持つ「好気性発酵」の技術を用いた処理の実用可能性を検討してまいります。
漁業分野では、今年3月に、東朝日町の松江水産物卸売市場(松江魚市場)がリニューアルオープンします。本市における「水産物の台所」として、新鮮な魚介類を飲食店や食卓に届ける流通の拠点施設となり需要が喚起されることで、水産業の振興につながるものと期待しています。
これらの取組みを通じて、第一次産業の活性化と担い手の確保・育成に向けた環境づくりを進めてまいります。
(2)ひとづくり
2つ目の柱は、誰もが自らの能力を存分に発揮し、いきいきと活躍できる社会の実現を目指す「ひとづくり」です。
自治会・町内会、公民館の持続可能な運営体制の確保
まず、本市において、自治会・町内会、公民館は、住民同士が支え合うことによって地域のつながりを育む大切な社会基盤です。しかしながら、近年、役員の高齢化や成り手不足により、これまでのような運営が難しい地域も見受けられるようになっています。
一方、1月6日に発生した地震の際には、近所に暮らす人同士が声を掛け合い助け合う、地域コミュニティの重要性が改めて認識されました。災害時のみならず、日頃からの見守りや声かけなど、地域における「人のつながり」が果たす役割はきわめて大きく、安心して暮らせるまちづくりに欠かせないものと考えています。
こうした認識から、本市では、配布物や回覧物の見直し、各種手続きのオンライン化などにより、町内会・自治会における負担の軽減を図り、誰もが参加しやすい仕組みと環境を整えてまいります。
本市においてこれまで先人が育んできた、住民同士が支え合い安心して暮らせる地域社会を、絶やすことなく次世代に引き継ぐため、時代背景に合った見直しや工夫を加え、その実現に取り組んでまいります。
こどもたちの学びを支える教育環境の整備
次に、未来を担うこどもたちが、安心して学び成長できる教育環境の整備についてです。
この3月には、令和4年に策定した「松江市教育大綱」の中間見直しを行うこととしています。この見直しを通じて、小中一貫教育、ふるさと教育、学校図書館の活用といった、本市が持つ強みをさらに生かすとともに、ICTや「ラーニング・コモンズ」を効果的に活用して学力向上を目指すなど、時代のニーズに応じた学びの機会の充実・強化を図ってまいります。
また、部活動の地域展開を推進し、これまで学校が担ってきた部活動を、地域のクラブや指導者との連携により実施する最適な形を追求します。少子化により学校単位での部活動の維持が難しくなる中、地域全体でこどものスポーツ活動・文化活動を支える体制を整え、多様な体験の場を確保するとともに、教員の負担軽減を図ります。
さらに、学校に通うのが難しい児童・生徒を支援するためのオンラインによる学習支援の取組み「ボタンねっと」を積極的に活用することで、こどもたちが社会とのつながりを持ちながら、それぞれのペースで学びを進められる環境を充実させてまいります。
地域ぐるみで子育てを応援する機運の醸成
加えて、本市では、子育て世代が安心して暮らすことができるよう、まち全体で子育てを応援する機運を高めています。
毎年11月19日を本市の「子育ての日」と定め、地域ぐるみで子育てを応援する「こどもまんなか松江」を展開します。「子育ての日」の前後1週間は、「子育ての日キャンペーン週間」として、市内の事業所や団体に対して、「ノー残業デー」の実施や休暇取得の奨励など、子育てを応援する取組みへの協力を呼びかけます。また、今年で4回目となる「子育ての日ファミリーイベント・ぐんぐんフェス」の開催を通じて、地域全体で子育てを支える機運の醸成を図ります。
併せて、産後の心身を労り支える「温泉ゆったり産後ケア」「みんなでHAPPY産後ケア」「通所型産後ケア」が人気を博しており、利用希望者が増加していることから、提供する施設の拡充に努めてまいります。
さらに、子育て世帯の経済的負担の軽減にも取り組みます。昨年4月には、子ども医療費の助成対象を高校生年代まで拡げましたが、今年4月からは、こどもを2人以上持つ世帯が、きょうだいで同時に保育施設において「一時保育」「病児保育」「子育て短期支援」を利用する場合、その利用料を減額することといたします。
こうした子育て支援の多面的な取組みが評価され、日本経済新聞社と日経BP社による「共働き子育てしやすい街ランキング」において、本市は3年連続中国・四国地方第2位、全国順位も一昨年の47位から昨年は33位とランクアップしています。
今後も、子育て世代が安心して暮らせるまちの実現に向けて、「松江ならでは」の子育て支援をさらに充実させ、地域全体でこどもと家庭を温かく支える風土を育んでまいります。
(3)つながりづくり
3つ目の柱は、本市が誇る自然・歴史・伝統文化を大切にしながら、地域との関わりや人の流れを生み出す取組みを通じて、市民と地域、市外の方々との結び付きを拡げ深める「つながりづくり」です。
スポーツを生かした賑わいのあるまちづくり
まず、本市においてスポーツの存在は、市民の皆様の健康づくりに寄与するだけでなく、世代を超えた交流やつながりを生み、地域の活性化を促すものとなっています。
本市では、今年秋に開幕する、新しいプロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE PREMIER」の参入基準に適合するホームアリーナの整備を進めており、9月には、5,000人分の観客席やスイート・ラウンジを備えた松江市総合体育館がリニューアルオープンします。さらに、10月には、西浜佐陀町の旧松江イングリッシュガーデン駐車場跡地に、島根スサノオマジック専用の練習施設「スサマジ・ビレッジ」が竣工する予定です。島根スサノオマジックの新たな活動拠点が相次いで整備されることで、こどもたちの夢が育まれ、本市のスポーツ振興にも大きく寄与するものと期待しています。
誰もが気軽に芸術文化に親しめるまちづくり
さらに、市民の誰もが気軽に本市の芸術文化に触れ、親しみ、楽しむことのできるまちづくりにも取り組んでいます。
本市の芸術文化の拠点である、さんびる文化センタープラバホールは、今年、昭和61年6月の開館から40周年を迎えます。長年にわたり、市民の皆様の芸術文化活動を支えてきた本施設には、中国・四国地方の公共ホールで唯一のパイプオルガンが設置されており、質の高い音楽文化を提供できる場として内外から定評を得ています。
また、併設する市立中央図書館では、令和5年10月の大規模リニューアル後、大活字本、録音図書、点字図書のコーナーを設けるなど、「読書バリアフリー」の実現に向けて取り組んでまいりました。今年8月には、視覚障がいのある方や図書館を訪れるのが難しい方も読書が楽しめるよう、オンラインで電子書籍にアクセスできる「電子図書館」を導入することとしています。
さらに、本市が誇る伝統芸術「佐陀神能」については、ユネスコ無形文化遺産の登録から15周年を迎えるのを記念して、令和9年3月に全国有数の神楽団体を招き、「神座(かむくら)」と題した公演を挙行する予定です。
併せて、本市が隔年で開催する「松江市伝統芸能祭」を同時開催し、脈々と受け継がれてきた伝統芸能の魅力を共有するとともに、市民の皆様が身近にふるさとの文化を体感できる機会を創ります。
こうした取組みを通じて、「文化力を生かしたまちづくり」を推進してまいります。
地域との多様な関わりを創出する仕組みづくり
さらに、全国的に人口減少が進む中で、二地域居住など柔軟な暮らし方の推進は、地方への新たな人の流れを生み、地域の担い手や後継者の確保、「関係人口」の創出、ひいては地域経済の活性化につながります。
本市は、令和2年度より、民間事業者が運営するテレワーク拠点を活用し、地域住民とのコミュニケーションを通じて地域課題を共有し、参加者と地域の協働によりその解決を目指す「松江式ワーケーション」を実施しています。これまでに251人の方に参加していただく中で、ワーケーション終了後、本市の「関係人口」として継続的にまちづくりに関わってくださっている方もおられ、二地域居住につながっています。
また、「関係人口」の創出に直結するふるさと納税については、令和7年度の目標額6億円を上回り、6億5千万円の寄附実績を見込んでいます。令和8年度は、7億円を目標に掲げて、人気の特産品のほか、本市に訪れて楽しめる宿泊券・食事券・体験チケットなど、魅力ある返礼品をさらに拡充し、「関係人口」の拡大を図ってまいります。
今後も、県外で島根県が開催する移住フェアへの参加や、本市ホームページ・SNSでの積極的な情報発信に加え、本市の定住企業立地推進課に配置する「移住コンシェルジュ」による暮らしや住まいに関する相談支援を充実させることで、二地域居住の推進や本市への移住・定住につなげてまいります。
(4)どだいづくり
4つ目の柱は、市民の皆様が安心できる安全な暮らしを支える、都市基盤・社会資本の整備に取り組む「どだいづくり」です。
頼りになる市役所になるためのコミュニケーション力の強化
これまで、市政運営にあたり、私自身が先頭に立って現場に出向き、市民の皆様、事業者の皆様の声を直接伺うことを大切にしてまいりました。
「ふらっと縁カフェ」や「ミライソウゾウ会議」など、市民の皆様が気軽に参加できる対話の場を、毎年継続的に設け、その定着を図ることで、多彩な意見を市政に反映しています。
また、市内各地域における先進的な取組みを共有する「まちづくりを考える日」や、みんなでアイデアを出し合い課題解決を目指す「まちづくりでつながる日」を通じて、市民の皆様と行政が共通の未来を描き、一丸となって取り組むことが、本市の活性化につながっています。
さらに、今年度スタートした「まつえミライとーく」では、民間企業や小・中学生の皆様と7回にわたって意見交換させていただきました。これまで対話の機会が少なかった年代や職種の方々から直接ご意見を伺うことで、多くの刺激と新たな政策のヒントをいただいています。
今後も、こうした機会を継続して設けることで、市民の皆様に頼りにされる市役所と、誰もが安心して暮らせるまちの実現を図ってまいります。
歩きたくなる魅力的なまちなみと水辺空間の創出
また、「水の都」である本市の魅力を体感できるイベントを、「ミズベリング松江協議会」などが中心となり、市内中心部の宍道湖畔や大橋川沿岸の水辺空間で定期的に開催し、多くの市民や観光客の皆様に参加していただいています。
こうした活発な取組みが国土交通省から評価され、令和6年9月に、岸公園と白潟公園が「河川空間のオープン化区域」に指定され、宍道湖畔を商業目的で活用しやすくなりました。
一方、本市が国と連携して策定した「宍道湖・大橋川かわまちづくり計画」に基づき、国土交通省が整備を進めてきた宍道湖北岸の親水護岸については、昨年4月に、コンサートが開催できるオープンスペース「水辺ステージ」が完成し、同じく11月には、様々なイベントに利用できる「多目的テラス」の供用が開始されています。令和10年度には、宍道湖で水遊びが楽しめる「ちゃぷちゃぷ広場」を含む千鳥南公園のリニューアルオープンを予定しており、水辺エリアの機能とその魅力がより一層高まるものと期待しています。
さらに本市では、豪雨災害を未然に防止する観点から、国・県と連携して、大橋川改修と中海・宍道湖の湖岸堤整備を計画的に進めています。市民の皆様の生命・財産を守ることを第一に、環境や景観との調和を保ちながら、水辺の利活用と都市機能の向上に取り組むことで、持続可能で魅力的な「かわまちづくり」を推進してまいります。
カーボンニュートラルの実現に向けた取組み
そして、本市は、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて、再生可能エネルギーの導入や既存設備の省エネルギー化を積極的に進めています。
民間事業者と連携して、本市が保有する土地に太陽光発電設備を設け、再生可能エネルギーを創出・供給する「オフサイトPPA」による脱炭素化を進めます。また、宿泊施設や公共施設の駐車スペースを活用して太陽光発電を行う「ソーラーカーポート」の設置にも取り組んでいます。これらにより、各施設のエネルギー自給率を高めるとともに、災害時の円滑な電源の確保にもつなげてまいります。
さらに、公用車である電気自動車の更新や、市道や公共施設における照明のLED化を計画的に進めることで、環境負荷の低減と維持管理コストの削減の両立を目指します。
また、民間事業者による再生可能エネルギー発電に関しては、昨年6月に「松江市再生可能エネルギー発電事業と地域との調和に関する条例」、いわゆる「まつえ再エネ条例」を制定し、事業者において適切な環境配慮がなされ、市民の皆様が安心できる仕組みを整えたところです。
今後も、「脱炭素先行地域」として、官民連携の下、カーボンニュートラルを着実に推進し、資源循環型社会の形成に努めてまいります
誰もが安心して暮らせる地域福祉と健康づくり
さらに、本市では、誰もが安心して暮らし続けられる地域社会の実現に向け、地域福祉の充実と健康の増進に取り組んでいます。昨年3月に策定した「第6次松江市地域福祉計画」では、「みんなでやらこい 福祉でまちづくり」を基本理念に掲げ、住み慣れた地域で、誰もが役割を持ち、地域福祉活動への参加を通じて、地域全体で支え合う環境づくりを進めています。その一環として、身近な地域での交流を目的とした「なごやか寄り合い」は、住民同士の日常的な交流や見守りの場となり、地域のつながりを育む役割を果たしています。
また、令和8年度からは、島根県耳鼻咽喉科医会と連携し、身体障がい者手帳の対象とならない軽度・中等度難聴者を対象に、補聴器の購入費の一部を助成する制度を新たに導入します。高齢者の難聴は、日常会話に支障を来たし、孤立を招く要因にもなります。医師の指導の下、適正に補聴器を使用していただくことで、コミュニケーションの円滑化と社会参加の促進を図り、併せてフレイル予防や介護予防にもつなげてまいります。
さらに、令和8年度は、訪問に時間がかかる過疎地域などの条件不利地域において、訪問診療を行う病院・診療所を支援する制度(条件不利地域訪問診療支援事業)を創設します。条件不利地域における在宅医療の確保と、住み慣れた場所で安心して暮らせる生活環境の維持・改善を目指します。
これからも、市民の皆様お一人おひとりの立場に立って、福祉と健康の充実に取り組んでまいります。
(5)なかまづくり
5つ目の柱は、ユニークな地域資源を活用し、中海・宍道湖・大山圏域が一体となって、その魅力を高めるための「なかまづくり」です。
地域をつなぐ高速交通ネットワークづくり
山陰の中心に位置し、その「玄関口」となる本市は、中国・四国地方をつなぐ結節点としての役割を果たすべく、高速交通網の構築と強化に努めています。
中海・宍道湖・大山圏域を「無限大」の形に結ぶ「中海・宍道湖8の字ルート」は、観光・産業・防災など多方面にわたり、圏域に大きな効果を確実にもたらす高速交通ネットワークです。その実現に向けて、関係する自治体や経済界が一体となって、国に対する要望活動と地元の意識喚起に積極的に取り組み、この圏域の活性化と活力の創出を図ってまいります。
さらに、中国横断新幹線(伯備新幹線)および山陰新幹線については、整備計画路線への格上げを目指して、県や全国の基本計画路線を有する同盟組織と連携して国への働きかけを強め、早期実現に向けた機運の醸成を図ってまいります。
これら本市をつなぐ高速交通網の整備は、南海トラフ地震など自然災害に備えたリダンダンシー(冗長性)の確保や、わが国の均衡ある国土形成の観点からも重要な位置づけにあることから、官民が一体となりさらに広域連携を深めることで、その実現に取り組んでまいります。
海外(インド・台湾)とのビジネス連携の推進
また、本市を含む5市7町村で構成する、中海・宍道湖・大山圏域市長会は、経済界で組織するブロック経済協議会とともに、地域産業の発展に向けて、海外とのビジネス連携を積極的に推し進めています。
とりわけ、これまで10年以上にわたり交流を深めてきたインド・ケララ州とは、昨年10月に圏域市長会、ブロック経済協議会、山陰インド協会が合同で現地を訪問し、ケララ州との経済連携にかかる覚書(MOU)を更新しました。今後、この覚書に基づき、農業・漁業・貿易・観光・ITなど9つの重点分野において、具体的な連携プロジェクトの進展を図るための実施計画を策定し、取組みを加速してまいります。
また、本市の花である牡丹をきっかけに、平成18年から交流が始まった台湾・台北市とは、今年、牡丹交流20周年の節目を迎えました。今月開催された「春節前建国花市」には17年連続で「松江大根島牡丹」を出展し、台北市へのランタンの贈呈やフラワーアーチの設置など、20周年を記念するイベントを催しました。さらに、今年4月には、建国花市の関係者を「大根島ぼたん祭」に招くこととしており、牡丹の魅力を広く発信するとともに、両地域の交流を深めてまいります。
こうした長年の交流の積み重ねは文化面にとどまらず、ビジネス連携にも広がり、とりわけ近時大きな進展が見られます。昨年11月に、台湾政府・経済部の傘下にあるTJPO(台日産業連携推進オフィス)とともに、DXを駆使したスマートソリューションに関する商談会を初めて米子市内で開催し、日台企業のビジネスマッチングを図りました。引き続きフォローアップを行い、両地域の連携を加速してまいります。
人口減少や少子高齢化が進展する中で、海外とのつながりの構築・深化は、地域経済の持続的な発展に大いに寄与するものと考えています。とりわけ、私たちの暮らす圏域には、海外に訴求できる地域資源や地域企業が集積しており、これらを最大限生かして新たな価値の創造につなげるべく、本市が圏域をリードしてまいります。
終わりに
以上、令和8年度の施政方針ならびに市政運営に臨む私の考えと主な施策について申し上げました。
私たちを取り巻く社会環境は、これまでに経験したことのない人口減少社会の到来や、地球温暖化による災害リスクの増大、国際情勢や国家間のパワーバランスの複雑化、AI・人工知能をはじめとするDXの進展など、かつてないスピードで変化しています。こうした変化は、先行きが見通せない不安定な要素であると同時に、新たな価値を生み出し、未来を切り拓く大きなチャンスでもあります。
本市には、豊かな自然、歴史と伝統文化、人と人との温かいつながりといった、ユニークでかけがえのない「松江ならでは」の強みがあります。こうした魅力を最大限生かし、市民、企業・団体、教育機関、金融機関、行政などが「オール松江」として一丸となり力を合わせることで、持続可能な未来を切り拓くことができるものと確信しています。
令和8年度は、本市が新たなステージへ「バージョンアップ」する重要な年となります。変化を恐れず、むしろ楽しみ、挑戦し続ける姿勢を大切にしてまいります。
松江の新たな価値と魅力を市民の皆様とともに創り上げ、未来に向けて力強く駆け上がっていく一年とすることをお誓いするとともに、議員の皆様、市民の皆様には、引き続き市政運営へのご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げて、令和8年度の施政方針とさせていただきます。
この記事に関するお問い合わせ先
政策部 政策企画課
電話:0852-55-5173
ファックス:0852-55-5535
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更新日:2026年02月25日