令和4年度市長施政方針

更新日:2023年02月01日

 松江市議会2月定例会の開会にあたり、令和4年度の市政運営に臨む私の施政方針と、令和4年度に進めたいと考えている主な事業の内容について申し上げます。
  議員の皆様ならびに市民の皆様には、ご理解とご協力をお願いいたします。

はじめに

 はじめに、新型コロナウイルス感染症対策の最前線で、私たちの健康と安心を支えて下さっている医療従事者の皆様に、心より敬意を表します。
 また、地域経済の落ち込みに耐え、感染予防対策を徹底したうえで、事業の継続にご尽力いただいている事業者の皆様、マスク着用・手洗い・「3密」の回避など、感染症予防に努めていただいている市民の皆様に、深く感謝申し上げます。

新型コロナウイルス感染症の克服

 新型コロナウイルス感染症は、皆様のご協力により、昨年秋から冬にかけて一旦落ち着きを見せたものの、感染力の高い変異株の発生によって感染者数が再び増加し、島根全県にまん延防止等重点措置が適用されるなど、いまだ先行きが見通せない状況が続いています。
 引き続き気を緩めることなく必要な対策を講じ、この難局を乗り越えてまいりたいと考えております。
 まず、市民の皆様の健康を守るため、島根県と連携して、医療提供体制ならびに保健所の即応体制を確保いたします。受診相談センターによる相談対応、松江市医師会と連携した診療・検査の実施など、適切な相談・診療・検査体制を維持します。また、ワクチン接種を安全かつ速やかに進めるための体制を継続的に確保してまいります。
 さらに、市民の皆様の暮らしを守るため、地域経済の回復に力を入れます。まん延防止等重点措置の適用期間における飲食店の営業時間短縮などに伴う協力金、ならびに国による「事業復活支援金」に加えて、本市独自の「松江市事業復活支援金」を創設し、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、売上が減少した市内の事業者のうち、国の制度の適用対象とならない事業者に対して支援金を給付します。
 こうした取り組みを含め、市民、市内事業者、行政が一丸となってコロナ禍を克服してまいりましょう。そして同時に、来(きた)るべきアフターコロナを見据えて、本市を持続可能な魅力あるまちにグレードアップするための施策に、力を尽くしてまいりたいと考えております。

誰もが利用しやすい『ちょうどいい』市役所へ

 このうち、令和4年度に取り組むべき主要施策として3点挙げさせていただきます。
 第一に、行政サービスのデジタル化を推進することで、市民の皆様が行政手続きを手軽に進められる環境を整えます。
 今月から、市役所本庁の市民部市民課の証明発行窓口でキャッシュレス決済を導入するなど、サービスのデジタル化を進めています。3月には、「松江市みんなにやさしいデジタル市役所計画」を策定し、パソコンやスマホに馴染みのない方を含めて、誰もが利用しやすい『ちょうどいい』市役所を目指してまいります。申請書に氏名や住所が自動入力される「書かなくて済む窓口」への移行や、病児保育施設のオンライン予約サービスの稼働、保育料や児童クラブ使用料をコンビニエンスストアやスマホで納付できるようにするなど、市民の皆様の利便性を高めてまいります。
 こうした行政のデジタル化や、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するため、政策部内に新たに担当セクションを設けます。

エネルギー政策の推進と「SDGs未来都市」認定取得に向けて

 第二に、全国唯一の原子力発電所立地県庁所在地である本市が、全国に先駆けて環境負荷の低減に資するエネルギー政策に取り組みます。
 松江らしい再生可能エネルギーの導入を検討し、民間の先駆的な事業を支援することで、エネルギーの「地産地消」モデルを構築するとともに、ビジネス機会の新規創出、地域経済の活性化を導いてまいります。たとえば、温泉資源による「地熱発電」や、水の豊かさを生かした「小水力発電」など、本市の地域特性を踏まえたエネルギーの可能性を調査・追求してまいります。
 ついては、環境政策とエネルギー政策を強力に推進するため、従来の「環境保全部」を「環境エネルギー部」に再編いたします。
 また、昨年から、海藻や湖の水草(みずくさ)を活用して二酸化炭素を吸収する「ブルーカーボン・オフセット」の検討を始めておりますが、こうした全国の先頭に立つチャレンジを通じて、県内初となる「SDGs未来都市」の内閣府認定取得を目指し、政策部内に担当セクションを設け、取り組みを加速してまいります。

人口減少対策、地方創生の推進

 第三に、人口減少対策に力を入れ、地方創生を推進してまいります。
 令和2年の国勢調査によると、本市の人口は203,616人となり、5年間で3,000人弱の減少となりました。少子化による若年人口の減少は当分続くと想定されるため、中長期的な視点を持って、対策を講じることが重要と考えております。
 本市は、平成17年の国勢調査で全国に先んじて人口が減少に転じるなど、『課題先進地』としての自覚を持って、子育て・医療・福祉の充実や健康増進への取り組みを重ねており、今や育児支援や医療の安定感は、本市の魅力の一つであるものと自負しております。
 また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴いテレワークが注目され、都市部の企業には、従業員のニーズに応じて地方移住を可能にする動きも見られます。本市の豊かな自然や優れた通信環境を活用できる「ワーケーション」についてアピールするなど、強みを生かし時代の変化を捉えた施策を実行し、地方創生を推進してまいります。

夢を実現できるまち誇れるまち松江

 こうした人口減少対策や地方創生が目指す理想的な姿として、本市に暮らす20万人の市民誰もが、この地で穏やかな暮らしを楽しみ、夢や希望が持てる社会であることと確信しております。
 このたび策定する「松江市総合計画」では、「松江のジダイをつくる」を基本理念としております。そこに込めた強い意志と未来への展望のもと、本市が目指す将来像「夢を実現できるまち誇れるまち松江」の創造に向けて、本市に関わる全ての皆様とともに歩みを進めてまいりたいと考えております。
 そこで、令和4年度における具体的な取り組みについて、新たな「松江市総合計画」に位置付ける、「しごとづくり」「ひとづくり」「つながりづくり」「どだいづくり」「なかまづくり」の5つの柱の項目毎にご説明申し上げます。

1.しごとづくり

 一つ目の柱はコロナ禍で疲弊する地域経済の立て直しと安定した雇用の維持・拡大、そして松江発のユニークなビジネスの創出を目指す「しごとづくり」です。

変化に強い企業づくり

 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて厳しい業況にある製造業やサービス業などを対象に、感染症拡大、自然災害など事業環境の変化に対応できる、新製品の開発や新事業分野への進出などの取り組みを支援してまいります。

起業・創業によるイノベーションの創出

 なかでも、起業・創業支援を強力に推進し、イノベーションを創出するため、新たな技術や考え方を取り入れた価値創造へのチャレンジを、産官学金の総合力で支援する「MATSUE起業エコシステム」の仕組みをつくります。
 起業を志すスタートアップ人材、新技術の開発を手掛ける大学や高専、業容の拡大や事業承継を念頭に置く地元企業、全国で活躍する有望企業などの協力を得て、地方銀行やベンチャーキャピタルによるファイナンスの提供、国・県が行う創業支援との協働など、従来の枠組みにとらわれない、業種・業界を超えた横断的な連携を目指します。
 また、アメリカのシリコンバレーに集まる世界最先端のスタートアップ企業など、世界中のビジネスシーンで使用されるプログラミング言語「Ruby」を軸に、国内外から世界へ挑戦するベンチャー企業やIT企業が集積する地となるべく、松江のブランド力を高めてまいります。

中心市街地の活性化と職人商店街構想

 アフターコロナを見据え、消費喚起や販売の促進を通じて、地域の賑わいを創出する商店街の支援にも注力してまいります。
 また、JR松江駅と国宝松江城をつなぐ中心市街地に人の流れをつくり賑わいを取り戻すため、本市の歴史・文化・水辺を生かしたゾーニングを示す「中心市街地エリアビジョン」を定め、新たなまちづくりのスタートを切ります。特に、多くの旅行者が訪れる松江城から市街地への回遊を促進するため、大手前駐車場用地の活用方策について、市民の皆様にご意見をいただき検討を進めます。
 加えて、公約に掲げる「職人商店街」の具現化に着手してまいります。私が考える「職人商店街」とは、松江が誇る漆器、陶器、民芸紙、めのう細工などの伝統工芸店や、和菓子づくり、茶の湯、そば打ちなどが体験できる飲食店が軒を連ね、優れた職人の技とまちの活気が感じられる賑わいの拠点です。ここを訪れる市民や旅行者と職人がふれあうことのできる、松江にしかない空間を思い描いております。
 本年度は、課題の洗い出しや先進事例に基づく成功要因分析など、事業実施による効果と実現可能性を調査してまいりました。令和4年度は、ものづくり職人や商店街の皆様と知恵を出し合い、実現に向けて着実に歩みを進めてまいります。

「松江のそば文化」のブランド化

 さらに、農林水産業の振興に関して、特産品のブランド化と担い手の育成・確保を図ります。
 本市発祥とされる「出雲そば」については、先般、松江そば組合、松江商工会議所、松江観光協会などで構成する「松江そば文化ブランド化推進協議会」が設立されており、今後、「松江のそば文化」の発展に向けて、生産者の皆様とともに取り組んでまいります。

農林水産業の担い手育成・確保

 農業の担い手となる人材の育成については、就農につなぐコーディネーターを中心とする相談体制を確立し、就農に必要となる機材・施設の整備などを支援してまいります。
 また、鹿島・島根栽培漁業振興センターで生産された種苗を活用したあわびの陸上養殖に向けて、取水施設の整備などを行い、栽培漁業の振興による雇用の創出を目指します。
 こうした取り組みに加え、漁業の担い手を確保するため、若手漁業者の参入に当たって必要な設備投資や副業化をサポートし、資金面の課題解決に寄与します。
 一方で、農林水産業をはじめとする担い手不足の背景には、年間を通して安定した雇用環境や一定の給与水準が確保できないという課題が見られます。そこで、地域で必要な仕事を組み合わせ、通年の雇用を創出する「特定地域づくり事業協同組合」制度を活用して、UIターンを希望する若者に対して働く場を提供します。そのために、まずは利用ニーズを調査し、本市での有効性を検証してまいります。

観光業のV字回復を目指して

 観光業に関しては、観光需要のV字回復を目指し、誘客プロモーションを強化します。テレビ、雑誌、ウェブなど多様な媒体を活用したPRに力を入れ、国内外に松江の魅力を届けるとともに、自然・歴史・伝統文化など本市の特性を強みに、旅行商品の企画・販売の促進や、コンベンション・修学旅行の誘致に取り組みます。
 諸外国との渡航制限が緩和され、インバウンド観光が再開できた際に、海外需要を遅滞なく取り込むため、台湾・フランスをはじめとして、それぞれの市場ニーズに応じた積極的なプロモーションを、トップセールスを含め展開します。
 本市の豊かな自然や食を生かした「癒し・健康」をテーマとする非日常体験など、ユニークなコンテンツの創造に力を入れ、「国際文化観光都市・松江」の価値を高めてまいります。
 併せて、市民や民間事業者の皆様とともに、世界に誇れる「観光のまちづくり」を進めるための「観光戦略プラン」の策定に取り組んでまいります。

2.ひとづくり

二つ目の柱は、未来を担う子どもたちを大切に育てると同時に、誰もが個性と能力を発揮できるまちとなることを目指す「ひとづくり」です。

子どもたちの健やかな成長のための環境づくり

 心豊かな生活を実現するためには、市民一人ひとりの希望に叶った働き方が尊重される社会を築く必要があります。子育てや介護と仕事を両立したい同僚や部下に、「お互い様」の気持ちで接することのできる、みんなで支え合える社会をつくりたいと考えています。
 本年10月の「出生時育児休業制度」いわゆる「産後パパ育休制度」のスタートに併せて、事業主の皆様とともに、育休取得促進のためのキャンペーンに取り組みます。
 未来を担う子どもたちは、本市の「宝」です。その健やかな成長のために必要な環境を整えてまいります。
 子どもたちの豊かな感受性を育むため、親子でふれあう機会はとても重要です。そのためのきっかけのひとつとして、4か月健診に合わせて絵本を贈る「ブックスタート」の取り組みを始めます。
 また、子育ての相談に24時間お答えするため、昨年4月に開始した「まつえの子育てAIコンシェルジュ」をバージョンアップし、利用者の皆様から問い合わせを多数いただいている、遊び場、レシピ、子育て支援制度についての説明動画を製作し、子育てにまつわる情報発信を強化してまいります。

教育環境の充実と女子高生徒の対応力強化

 これまで、小中学生の教育現場において、デジタル技術を活用した効果的・効率的な学習に取り組んできましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、ICTを活用したオンライン学習の必要性がさらに高まっています。
 本市では、本年度、すべての市立小中学校・義務教育学校に、電子黒板と一人一台のタブレット端末の配備を完了しました。本年1月には、内中原(うちなかはら)小学校の6年生を対象に、自宅と学校をつなぐオンライン授業の実証実験を行っております。今後も、一斉休校への対応はもとより、教育環境の充実のため、デジタル化を推進してまいります。
 加えて、市立皆美が丘女子高校の魅力化に取り組みます。先日、同校のダンス部が、プロバスケットボールチーム島根スサノオマジックの専属チアリーダー「アクア☆マジック」の練習を見学し、スサノオマジックの試合前にパフォーマンスを披露しました。こうした、地域とのつながりを大切にする活動により、実社会での対応力を育んでまいります。
 また、昨年末には、市民活動センターや公民館などに自習室のスペースを開設し、学生の皆様に利用していただいています。今後も、勉強や仕事に活用できるスペースを確保し、本市ホームページにてお知らせしてまいります。

誰もが活躍できる地域社会へ

 さらに、ご高齢の方や障がいのある方などが取り残されることなく、一人ひとりの個性が尊重され、誰もが活躍できる地域社会を目指してまいります。
 そのために、シルバー人材センターを核として、高齢者の経験や知識を活かせる分野への就労機会の拡大を図ります。併せて、障がいのある方の就労状況を調査し、島根労働局との連携により、求職と就労をつなぐ体制を構築してまいります。
 また、障がいのある方とそのご家族の総合相談窓口である「まつえ障がい者サポートステーション」の機能を深化させた「松江市障がい者基幹相談支援センター『絆』」を新たに設置し、主任相談支援専門員、社会福祉士などの専門職員を配置して、相談支援の充実を図り関係支援機関との連携を強化します。
 令和2年度より、失語症者の社会生活における意思疎通を支援するための「失語症者向け意思疎通支援者養成講座」を開催しておりますが、令和4年度からは、失語症の方が気兼ねなく外出や活動ができるよう、意思疎通支援者を派遣する仕組みを整えてまいります。

地域活動・市民活動の広がり

 昨年11月には、地域づくりのために重要な役割を担っていただいている町内会・自治会連合会と連携し、身近な地域活動や成功事例を発表していただく、「まちづくりを考える日」を開催しました。地域資源を活用したユニークな取り組みは、他の地域や団体の参考になるとともに、それぞれの活動の在り方を考える好機になったものと捉えております。
 令和4年度は、引き続き「まちづくりを考える日」を開催するとともに、市民、NPO、企業、行政が集い、新たな連携を生み出すことを念頭に、「まちづくりでつながる日」と題したイベントの開催を計画しております。各地域の特色と各団体が持つ強みを生かしていただきながら、魅力ある地域づくりを進めてまいります。

3.つながりづくり

 三つ目の柱は、本市の唯一無二の歴史・伝統文化を継承し、文化やスポーツなどによって、市民の皆様の関わり合いの創出を目指す「つながりづくり」です。
 これまで、文化行政については、地域振興や観光、文化財など個別テーマ毎に本市の担当セクションを置いていましたが、これを一元管理するため、「文化スポーツ部」を新設し、文化及びスポーツを起点とするまちづくりに力を入れてまいります。

歴史・伝統・文化・芸術の魅力・価値の再認識

 本市固有の歴史・伝統・文化・芸術は、私たち市民の誇りであり、松江を訪れる旅行者を引き付ける魅力ともなっています。
 なかでも、高い人気を誇る国宝松江城天守については、同じく国宝天守を有する松本市・犬山市とともに、「近世城郭の天守群」としてユネスコ世界文化遺産の登録を目指しています。政府が検討を進める「世界遺産暫定一覧表」の更新のタイミングに合わせて、より積極的に活動してまいります。
 令和4年度には、松江の伝統芸能が一堂に会する「伝統芸能祭」を開催します。佐陀神能のユネスコ無形文化遺産登録10周年を記念するイベント「神座(かむくら)」も実施し、伝統文化継承の機運を高め、後継者の育成につなげてまいります。
 また、世界の文化芸術に触れる貴重な機会である「松江・森の演劇祭」を5年ぶりに開催します。招聘した国内外の劇団によるパフォーマンスは、間違いなく大きな感動を与えてくれるものと期待しています。
 令和4年度は、本市の文化芸術活動の拠点である、松江市総合文化センターのリニューアル工事にも着手します。4月から2年にわたり休館することとなりますが、パイプオルガンの改修を含め、市民の皆様により一層親しみを持っていただける、居心地の良い空間をつくってまいります。
 加えて、本市出身でインド哲学・仏教学を中心とする東洋思想研究の世界的権威である、故・中村元(はじめ)博士のご生誕から本年で110周年、また中村元記念館の開館から10周年を迎えます。特別企画展など記念イベントの開催に合わせて、本市とインドとの文化面・産業面での連携・交流を促進してまいります。
 さらに、「島根半島・宍道湖中海ジオパーク」については、拠点整備による情報発信機能の向上や、大学・民間団体・公民館など地域の活動やコミュニティとの協働が進んだ点が評価され、先月、日本ジオパークとして再認定を受けました。今後は、大地の成り立ちとその大地に育まれた自然・歴史・文化を生かし、ふるさとに対する関心や愛着を育むとともに、「ジオツアー」の造成や関係機関とのパートナーシップの構築を通じて、産業・観光面の地域振興に寄与してまいります。

県外の大学へ進学する卒業生とのつながり

 本市と市民の皆様のつながりを維持・創出し、とりわけ若い世代の定着を図るため、県外に進学・就職する市内高校生・卒業生との関係強化を図ります。
 県外へ進学した学生が就職などのターニングポイントにおいて、松江を「選択肢」として意識できるよう、卒業生とのつながりを保ちます。まず、松江南高校と松江商業高校をモデル校に、生徒と地元企業や地域コミュニティが関係をつくるための担当者を配置し、LINEを活用した情報発信や地元との関わりを形成するプログラムを実施してまいります。

夢や希望、ふるさとに愛着と誇りを育むスポーツの力

 また、松江に本拠を置く島根スサノオマジックの躍進や、錦織圭選手・細木咲良選手など地元出身のスポーツ選手の活躍は、子どもたちにふるさとへの誇りと、夢や希望を与えてくれます。
 こうしたスポーツが持つ力に着目し、観光や産業、健康などの要素を掛け合わせて、松江ならではの新たな価値の創造を目指します。
 バンダイナムコやパナソニックなど、スポーツに取り組む民間企業との連携を強化するとともに、市民の皆様が身近にスポーツを楽しむことができ、防災拠点としても活用できる屋外施設として、中海湖畔に「スポーツパーク」の整備を検討します。
 さらに、2030年に本県で開催される国民スポーツ大会、全国障害者スポーツ大会での本市選手の活躍を見据えて、有望なジュニア選手の育成に努めてまいります。

4.どだいづくり

四つ目の柱が、「どだいづくり」です。本市の発展には、市民の皆様の安心・安全を支える、安定した社会資本が必要不可欠です。

質の高い医療の提供と健康づくり

 昨年12月、松江市立病院は松江赤十字病院と連携協定を締結しました。がん治療や周産期医療など互いの特色を生かし、医療機器の共同利用や患者紹介などについて協力することで、市民の皆様により質の高い医療を提供してまいります。
 また、市民の皆様に親しまれている「松江市の歌」の音楽に合わせたエクササイズを、幼児体操指導者の監修により考案して普及を図り、市民誰もが健康に過ごせるまちを目指します。
 近年、全国的に、新型コロナウイルス感染症の影響による自死者が増えており、今後もその増加が懸念されます。本市では、特に若者や働き盛りの世代に自死者が多い傾向があることを踏まえ、松江市医師会と連携し、インターネットやデジタルサイネージなど、目に留(と)まる媒体を通じた啓発活動に取り組み、必要な相談や支援につなぐことで、自死を未然に防いでまいります。

市域内のバランスの取れた発展と土地利用制度

 加えて、人口減少や高齢化が進む中にあっても、医療・福祉・商業施設など生活に必要なサービスを市民の誰もが享受し、安心して暮らすため、住民サービス機能を一極に集中配置する「コンパクトシティ」ではなく、市域内のバランスの取れた発展が望まれます。したがって、本市では、中心市街地と周辺部・旧町村部の市街地や集落など既存のコミュニティを、交通ネットワークでつなぐ「コンパクト・プラス・ネットワーク」の構築を目指してまいります。
 そして、そのための、本市に相応しい土地利用制度の在り方を議論してまいります。本市の土地利用制度は、高度経済成長期の昭和45年に、秩序のあるまちづくりを進めるために導入され、自然環境と調和したまとまりのある市街地の形成に寄与してきました。しかしながら、人口減少社会へと変遷する中で、土地利用規制が移住や企業誘致を阻害している、地域の衰退を招く要因になっているというご意見も挙がっています。本市が目指す「まちのかたち」を実現するための土地利用制度について、議会の皆様、市民の皆様と議論を重ね、令和4年度中に方針を決定してまいります。

公共交通の利便性を高める

 また、路線バスやコミュニティバスの利用状況などの実態調査を行い、バス路線の再編や多様な交通手段の活用を含めた、持続可能な、誰もが利用しやすい公共交通の環境を検討します。
 そのうえで、他地域の先進事例も参考に、市民の皆様のニーズと地域の特性に応じた移動手段が選択できる地域交通を構築すべく、八束町と美保関町を結ぶAIデマンドバスをモデルケースとして検証を図ってまいります。

誰もが利用しやすい、行きたくなる公園・水辺

 一方、子どもから大人まで誰もが利用しやすく、行きたくなる公園の整備にも取り組みます。老朽化遊具の使用禁止を早期に解消し、民間ノウハウを導入するなどして、地域の実情に即したユニークな公園整備を進めてまいります。
 宍道湖畔の千鳥南公園については、水辺を感じられる公園としての整備が期待されています。環境学習や、水面(みなも)を利用したレジャーなど、水に親しみ、遊び学べる場を創出してまいります。
 また、松江市総合運動公園内に、スケートボードが楽しめる多目的広場をつくり、熱中症対策のミストシャワーやジュニア用のバスケットゴールを新たに設置して、松江の「遊び場」を増やしてまいります。

災害から市民の暮らしを守る

 近年頻発する自然災害から、市民の皆様の暮らしを守るため、本市の国土強靱化地域計画に基づき、計画的に防災・減災、強靱化のための施策を進めます。
 昨年4月の島根町加賀での大火や、7月、8月の豪雨災害の経験を踏まえ、消防署に「指揮隊」を新規配備することで現場対応力を確立し、消防団との連携強化などを通じて、本市全体の消防力を高めてまいります。
 また、災害時の情報発信や、食糧の備蓄、避難所の運営など、各種防災機能を統括管理する総合防災センターの機能を、現在建設中の新市庁舎に配置します。
 なお、新庁舎については、令和7年度の本体完成を目指し建設工事を進めるとともに、庁舎の利活用や周辺エリアを含めた賑わいの創出に関してワークショップを開催し、市民の皆様のご要望やアイデアを踏まえて検討を図ります。
 東出雲町においては、支所、公民館、図書館、子育て支援センター、包括支援センターが一体となった複合施設の建設に着手し、各種機能を集約することで利便性を高めます。
 国土交通省を事業主体に、関係者の皆様のご協力により進捗している大橋川の改修については、市街地の治水対策はもとより、憩い集い楽しめる水辺空間の創造や周辺エリアの魅力向上を実現すべく、引き続き国や県と緊密に連携して進めてまいります。
道路や橋などの既存インフラについても、市民の皆様が安全に安心して利用できるよう、適正な維持管理と修繕を行います。とりわけ通学路の安全対策として、横断歩道の路面を周囲より盛り上げ、車両の速度抑制を図る「スムーズ横断歩道」を市道に設置していく計画です。

広報力の強化と頼りになる市役所を目指して

 次に、広報力の強化について、昨年4月に私が市長に就任して以降、市民の皆様に市政情報をタイムリーにお届けできるよう、多様な媒体を通じた広報活動に努めてまいりました。市議会本会議や記者会見では、パネルやモニターを用いてできる限りわかりやすくお伝えし、本市公式YouTubeチャンネルでの動画配信をはじめとしたSNSの活用など、情報提供に取り組んでおります。
 令和4年度においては、市民の皆様が必要とする情報をより簡単に入手できるよう、本市ホームページを全面的にリニューアルし、本市の広報力と市民の皆様の利便性を高めてまいります。
 また、昨年は、若手・中堅職員のアイデアを用いて、「市報松江」においてマンガを取り入れた情報発信を試みました。市職員が持つユニークな発想を積極的に採用してチャレンジできる環境を整え、職員が一丸となって市民の皆様から頼りにされる市役所をつくってまいります。

5.なかまづくり

 最後の五つ目の柱は、中海・宍道湖・大山圏域の連携強化に基づく「なかまづくり」です。
 圏域のさらなる連携と発展に必要となる交通ネットワークを形成するため、境港出雲道路を含む地域高規格道路、いわゆる「8の字ルート」の早期実現を目指して検討組織を立ち上げるなど、5市が一体となって取り組んでまいります。
 また、本市が平成26年に交流促進覚書を締結し、市の花である「牡丹」の輸出などを通じて、文化面で交流を図ってきた台北市については、インバウンド観光の誘客やICTをはじめとする産業面での連携が期待されます。今後、圏域市長会として、台北市との経済交流の促進に資する協定の締結を念頭に、具体的な協議を進めてまいりたいと考えております。
 このほか、圏域各市の強みを生かした相乗効果と、山陰の中核となる圏域が一体となって課題解決に当たるスケールメリットを存分に発揮してまいります。

おわりに

 以上のとおり、令和4年度に取り組む主要施策を説明させていただきました。
 これから迎える新年度は、新型コロナウイルス感染症の難局を克服し、新たな時代を創るために「潮目」を変える、変革の年と考えております。
 本市が「夢を実現できるまち誇れるまち松江」であると市民の誰もが胸を張れるよう、全力を尽くしてまいります。
 市議会の皆様、市民の皆様には、引き続きお力添えをいただきますよう、よろしくお願い申し上げまして、令和4年度の施政方針とさせていただきます。

この記事に関するお問い合わせ先

政策部 政策企画課
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ファックス:0852-55-5535
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