市長定例記者会見【質疑応答】
(山陰中央新報)マンション建設について、市民団体から土地の買取りの要望があり、議会の一般質問でも答弁をされていましたが、改めて買取りについてのお考えをお願いします。
(上定市長)土地の買取りについて、「まつえ/風景会議」から要望をいただいています。松江市として現在殿町マンションが建設される土地を買い取るということ自体の必然性があるわけではないですが、実際にその可能性を考えたときに当然相手先のある話になります。その相手先とはこれまでも幾度となく交渉、調整をしているところです。そういった中で、一般的な土地の価格というのは公示地価であったり近隣の通常の売買事例であったりしますが、そういった算式ではじき出した一般的な価格と、建築主の京阪電鉄不動産の提示額が大きくかけ離れています。議会の場でも申し上げましたが5倍程度離れており、そういった状況を踏まえて検討する必要があると認識しています。
(山陰中央新報)5倍ほど離れているということで高いという認識だと思いますが、それは買取りに向けては困難という判断を加速させるようなものですか。
(上定市長)通常考えたときに、行政として限られた財源をいかに有効に市民の皆さんに活用していくかという観点で、費用対効果を考えていかなければならないと思っています。今回の議会に令和6年度の当初予算について諮っていますが、財政的に余裕がある状況ではなく、むしろ貯金として持っていた財政調整基金を取り崩しながら執行しているという段にあって、先ほど申し上げたような価格差がある中で行政としてできることを考えてやっていくことになると思います。
(山陰中央新報)現時点で価格面だけを考えたら、困難ということですか。
(上定市長)いろいろな調整を京阪電鉄不動産との間でやっていますので、その過程で土地の買取りが行政としてできるのかできないのかということの前に、この土地を買い取ることの必然性が非常に語りにくい状況にあり、価格的なアプローチも含め、引き続き京阪電鉄不動産とは調整をしていく、今まだその途中にあるという認識です。
(山陰中央新報)買い取れば、今の計画を変えたり住民団体の方の要望に沿った対応ができるかもしれませんが、仮に買い取ったとして市としてこう使いたいといったビジョンまではないということですか。
(上定市長)そうです。今の段階で仮に買い取ったときの跡地の利用について明確なプランはもちろんありません。私は松江のまちづくりを進める上で一番重要なのは、やはり松江らしい町並みだと思っています。1611年に松江城が築城され、その城下町の町並み、堀川遊覧船が運航する掘り割りなども含めて、当時の状況がそのまま保たれています。そういった松江の唯一無二の町並みをきちんと守り、次世代に引き継いでいくことが我々の責務だと思っています。今回の高層マンションが建つことを私自身が願っているものではありません。そうした中で、行政としてこれは現行の法律、条例等を守ってプロジェクトが計画されているかしっかりと見ていく必要があり、当然見てきたところです。現行の法令でマンションが計画されている土地は商業地という位置づけで、計画のマンションを建てることができます。行政がその土地を買い取ることや、法令にのっとって開発されるものに対してできることに限界があるというのが正直なところです。
ただ、このままの状態でそうした高層ビルが乱立する状況になることに懸念を抱いてます。先人から松江城を中心とする松江市のユニークな町並みを引き継ぐことができてきたわけで、これを守っていくためには、そういった法令上の規制などを強化することにより、保全して次世代に引き継ぐ必要があると認識しています。そのためにできるだけ速やかに必要な制度等を整えていく方針で検討を進めているところです。
(山陰中央新報)松江城は世界遺産化を他市と連携して目指しておられますが、そういったことへの影響について、市長のご認識をお願いいたします。
(上定市長)今、国宝が松江城を含めて全国に5城あり、その5城、5市で連携し、ユネスコ世界文化遺産登録を目指して活動を始めつつあります。ユネスコの認定を受ける必要があり、長いプロセスが必要で、その5城の連携する意味合いが何なのかというストーリーを語っていく必要があります。まだ具体化はしていませんが、ユネスコで判断をしていくに当たっての要素というのがあります。その際に、バッファーゾーン、緩衝地帯という考え方があり、世界遺産の対象となるものの近隣においてその世界遺産の対象が際立つというか、その対象に干渉しないという位置づけのものが必要になってくるので、その意味でも今回検討している景観の規制についての拡充は必要だと認識しています。
一方で、今回のマンションが建つことによって今の段階で世界遺産の登録が不可能になるかについて、どこかに確認をしたわけではないですが、過去の事例などを見ても世界遺産の道が閉ざされるということはないものと考えています。
世界遺産の道のりは5市で連携を強化し、今後どう進めていこうかというところからですので、ある程度の時間は必ずかかります。それに合わせる形で、必要な規制の強化を生活の利便性も保ちながら、開発と保存のバランス、私が強く言いたいのはやはり松江らしい町並みを保っていくことに主眼を置いて、その先に世界遺産を目標とする取り組みがあると思っていますので、そこを今後検討していきたいと考えています。
(NHK)宿泊税について、これまで検討委員会で行われてきた議論の内容と、導入に向けての市長の所感をお願いします。
(上定市長)宿泊税の報告書を取りまとめて提出いただき、その内容を踏まえた上で松江市としての対応を検討していくことになりますので、頂いた際にまた質問いただければと思います。
(NHK)今後、宿泊税の設計に向けて市長がどういうものをイメージされているのかお聞かせください。
(上定市長)宿泊税については、昨年2月に策定した松江観光戦略プランの中でも位置づけて市内部でも検討を進めております。外部の皆さんにも検討いただき、その結果が出てくる段取りになっています。宿泊税を取り入れている自治体が必ずしも多いわけではないですが、松江の観光の価値、地域資源は世界に誇れるものがあると思います。これまでもインバウンド観光を中心としてその潜在性を伸ばし、松江市全体で観光振興をしていく中で、やはり財源が必要になります。そして人材が必要です。そのコントロールタワーとしての役割を果たす松江観光協会がどちらかというと行政中心の組織ですので、それを民間のノウハウがある方に入っていただいて機能を拡充していく。拡充した上で、財源をうまく効率的に効果的に配分することによって松江全体の価値を高めていく形にしていきたいです。財源面を考えたときに、宿泊税がまさに目的税としてその役割を果たす財源になり得るので、その適正な価格の設定、どう使っていくのかといったところを、今回の報告書を受けた上で松江市としても主体的に検討してまいります。
(中国新聞)宿泊税の額は決まっていないと思いますが、新たな観光の財源の使い道としては松江観光協会の体制強化費を想定されていたと思います。今回の当初予算に体制強化費が盛り込まれ、観光庁が登録している観光地域づくり法人への登録を目指して、多方面からそういった財源を確保していくという認識でよろしいですか。
(上定市長)令和6年度当初予算に盛り込んでいるのは、まさに松江観光協会の体制強化のための費用ということですが、宿泊税はすぐに導入するというものではないので、コントロールタワーになるに当たって、宿泊税をどう配分するか、観光協会の体制を強化していくために宿泊税を利用するということももちろんあり得ると思います。ただ、来年度すぐに宿泊税は施行されませんが、一方で松江に来た人が松江に観光に来たことを実感できるもてなしに使っていく財源にしていきたいと考えています。検討はこれからですが、広く皆さんにその恩恵を享受いただけるような、宿泊税を払ったことに費用対効果が見えるような分かりやすい使い道を考え、その使い道を当然のことながらしっかり公表して、皆さんのご意見を聞いた上でまた見直しを図っていく、PDCAのプロセスも確立していきたいと考えています。
(中国新聞)宿泊税の導入について、市内の観光事業者の方々はどう受け止めておられるかご存じですか。
(上定市長)観光事業者も参加する審議会で、継続的に審議をいただいています。観光客が今までよりも多くの支出をすることになりますので、きちんとした使い道が明らかで、効果を上げていくことを前提として考えています。宿泊事業者の皆さまにとってみると、それによって宿泊するハードルが上がると費用対効果という意味では逆の動きになりますので、使い道も含めて宿泊事業者の皆さまの意見も取り入れ、一定の理解を得た上での報告書を出していただけるものと認識しています。
(中国新聞)現時点で宿泊事業者の方から賛否については、まだ報告書が届いてないので具体的には把握されてないということになりますか。
(上定市長)我々が今後検討していくに当たって宿泊事業者の皆さんがどういう考えなのかを前提とする必要があると考えており、報告書をいただき、こちらからも確認したいと考えています。
(中国新聞)マンションの件で、景観審議会の委員9名の方々が再審議を求めていますし、議会の中でも意見聴取の場を設けるご発言されたかと思います。具体的なスケジュールはいかがですか。
(上定市長)検討を進めており、景観審議会の場合は会長と協議をしているところです。
(中国新聞)市民団体に対する回答の場も併せてという感じですか。
(上定市長)まつえ/風景会議からも要望書を頂いておりますので、それに対する回答の機会も設けたいと考えています。
(中国新聞)景観計画をこれから見直していくというご発言も議会の中ではあったかと思いますが、具体的なスケジュールの見通しがありますか。
(上定市長)景観計画という景観規制があります。条例で設置するもので、一方で都市計画法という法律に基づいてもう少し規制の度合いを強めるという方法もあります。現在、2つのパターンを思い描きながら具体的な景観が規制できる制度の拡充を目指しているところです。それぞれかかる期間が違い、今の段階でどちらの手法だったら何年ということを明確に申し上げられませんが、乱立するような状況を防ぐためにできるだけ速やかに規制を入れていく必要があると考えています。早く結論を見いだし、条例なり法律にのっとった形での制度のつくりつけをしていきたいと考えています。
(読売新聞)マンション計画について、審議会の再審議という陳情書が出ていて、それは委員会に付託されているということですが、これが可決された場合、市長のこれまでのお話では審議会はもう開かないということだと認識していますが、今後変わるということはありますか。
(上定市長)議会に陳情書が出されていて、それに対しての対応が検討されていると思います。景観審議会に対して諮問し答申いただいたという形で、その答申自体が有効であるという状況です。その審議会の皆さんからのもう一回その審議をすべきという意見に対しては、集まっていただき協議する場面を設けたいと思っています。そこでの意見も踏まえた上でどうするかを検討するつもりですが、現段階でその答申は有効であり、新たに諮問をして答申をいただくことは考えておりません。
(読売新聞)ガス事業の民営化のスケジュールが議会で公表されましたが、その選定委員会を構成される5人の中には今まで市営ガスの事業を請け負っておられた事業者の方が入られることはありますか。4月の中旬に1回目の委員会ということですが、選定委員はいつまでに決められる予定ですか。
(上定市長)譲渡先選定委員会は4月に開く方向で調整しており、メンバーについては早期に確定したいと考えています。その中で、ガス事業を請け負っている関係者の方は考えていません。やはり、中立公正に審議を進めていく必要がありますし、これまでも何回かガス事業者の方や組合の方とは意見交換の場も持っており、そこでリクエストをいただいてる部分があります。松江市としてガス事業を安定的に営んでいく上で、今関わっているガス事業者の皆さまの力量というかスキルがあって成り立っている部分がありますので、いただいた要望についてはその譲渡先選定委員会のほうに申し入れ、事業者の方が出席されてなくてもその思いが届くような形を想定しています。
(時事通信)自治体の基幹業務システムの標準化について、政府から先日、25年度末としている移行期限に間に合わない自治体が171あると発表され、松江市も入っていました。松江市は、標準化する業務のうち生活保護の分野で移行困難という回答でしたが、この移行困難としている要因は何だとお考えなのかと、この政府方針の所感ですとか今後の進め方について教えてください。
(上定市長)令和7年度末までにシステムを標準化するという政府の方針が出ており、それに向けて進めています。生活保護システムは、サービスを提供している事業者から令和6年度末をもってサービスの提供を終了するという通知があり、その後の生活保護システムについて検討して、令和7年度から新しいシステムを導入する見込みですが今回の標準化には乗ってこれないものであり、生活保護のシステムだけは独立して動かしていくことになります。ただ、そのシステムが独立していることで、生活保護の受給者やシステムの運用に不便が出てくるようなことは想定していません。今後、標準システムに乗せていくとことが必要ですので、その道筋をきちんと立てた上で全システムの標準化の形にしていきたいと考えています。今回、政令指定都市あるいは都道府県など比較的人口規模が多いところが、それぞれの事情によるので一概には言えませんが、大量のデータ処理が必要であり、一方でベンダー・エンジニアの数が限られている中で、なかなか全国一律に進めにくくなっている状況にあると思います。市民の皆さんにご不便をおかけしない形で進めていきたいと考えています。
(時事通信)生活保護システムの業者からサービス終了を告げられたということで、契約が満了ではないということですか。
(上定市長)6年度末をもって、サービスの提供を撤退したいという申出をいただいています。
(山陰中央新報)バス路線について、議会での答弁で、マリンプラザ線と大東線について7月、4月に公表できる見通しということでしたが、ほかの2路線についての検討状況はいかがですか。
(上定市長)今回、マリンプラザ線、御津線と大東線についてコミュニティバスで運行する部分と、一畑バスが運行する部分があり、それぞれについて接続だとか、ダイヤについて皆さんに安心していただけるように進めています。できるだけ早いタイミングで公表したいと考えており、できれば今年度末までのところでと思っています。公表の時期が取りまとめ後に少し先になるかもしれず、特に一畑バスは3月末に一畑バス側の運行計画が出る予定ですので、それを受けた上で考えていく必要があります。大東線は、雲南市と協議をしているところで、御津線についても、自治会や地元の方と意見交換を行い、その内容をうまくこのダイヤに反映する作業をしており、それに一定の時間を要しますが、できる限り早いタイミングで具体的なダイヤについてお示ししたいと考えています。
(山陰中央新報)松江だけに限らず県全域で民間のバス路線の廃止が多かったと振り返っています。24年4月以降になると24年度問題もあり、そういう流れが今後も続いていくと思いますが、受け止めをお願いします。
(上定市長)一畑バスの路線撤退あるいは減便の発表が昨年の11月17日で、今年の10月1日以降減便なり路線の廃止の方向を打ち出されました。交通の空白地が生じないこと、交通弱者と言われる学生の皆さんの通学に影響をできるだけ少なくするということを念頭に置き、一畑バス路線を引き継ぐ形でコミュニティバスの運行を始める、あるいは一畑バスのほうに運行の継続を申し入れるといったことを行いました。それに当たって、方針が出てすぐにも掛け合うべきでなかったのかと新聞に掲載されていましたが、実質的な交渉というのはすぐにスタートし、最終的に要望書を1月17日に一畑バスに対して提出し、1月23日に私のほうから記者会見でそういった方針を打ち出しています。交渉をする中で、具体的な案にたどり着くことができたのが1月23日であったということになります。松江市として、交通局を含めて、11月17日の発表後すぐに動き出し、できるだけ公共交通の利便性が悪くなることがないように手当てをしてきたつもりです。今後も、同じように運転手不足の状況が続くと想定され、バスの運転手になりたい人材が確保できるように処遇の改善等を図り、バスの運転手の魅力化も進めていく必要もあります。その方策を検討していく必要があり、松江市の場合は公共交通を支える一つの存在として、昨年の4月からコミュニティバスに替えてAIデマンドバスの運行を八束町と美保関町の宇井地区で開始しています。これを令和6年度に広げる予定で、そういった実証を重ねながら全体の公共交通体系を整理したいと考えています。それが運転手不足あるいは公共交通の路線の減便、路線の撤退の対応策になっていく可能性はあると思います。ただ、根本的な解決のために、令和4年まではいわゆる独占禁止法の関連で、一畑バスと松江市交通局が一体的に考えていくことができませんでした。今回は公共交通計画を策定し一緒に検討することである程度効率的、効果的なバス運行が可能になる部分があると思います。2社に分かれていることによる無駄な部分を考え、今後一体的な検討を進めていくことで、難しい局面が続くとは思いますが、それをいかに克服するかを考えてまいります。
(毎日新聞)マンション計画について、今後の景観審議会の委員さんとの意見聴取次第では再度審議会のほうに諮問する可能性もあるということですか。
(上定市長)今の段階で答申をいただいていますので、それについては審議会の皆さまとの協議が先と思っており、仮定の話にお答えできず大変恐縮です。
(毎日新聞)今後その高層マンションが乱立する状況を懸念されているということですが、その殿町プロジェクトが予定どおり建設された場合に、城下町の景観にどう影響するとお考えですか。
(上定市長)1つのマンションが建ったということで価値が毀損するほど松江は弱くないと思っています。
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更新日:2024年09月10日