美保関地区・重要伝統的建造物群保存地区選定に向けた取組み
松江市美保関地区の重要伝統的建造物群保存地区に選定されるための取組です。この保存地区を略して「重伝建」という言い方をします。
まず、この重伝建とは何かということを申し上げますと、伝統的な建造物と一体をなしてその価値を形成している環境を保存するために市が地区を決定するもので、それを国に対して申し出て、国のほうでここは価値が高いと認められると、重伝建という指定を受けます。これは文化財保護法に基づいています。例えば白川郷なんか大変有名ですけども、全国には43道府県106市町村129地区が指定されており、県内では3つの区域、大森銀山、温泉津、津和野が重伝建に指定をされています。これに続く県内4番目の選定を目指すための取組になります。
重伝建に選定されると何がいいことあるのかといいますと、税制面の優遇措置が講じられたり、重伝建に指定された建物を修理するときに補助制度が適用されて国から予算が出ます。ただ逆に、簡単にそれを取り壊すということもできなくなりますので、建築・改修等への制限が課されるということもあります。
重伝建に選定されたことによる効果も期待されるものがあり、歴史的な町並みが保存される、住民が暮らしやすい環境が整備されるというのが一つ。もう一つは、この地域が重伝建であるということで、相対的に価値が高まることになりますので、観光誘客が盛んにできるようになったり、あるいは空き家の利活用等が進むといったメリットがあるものと見込んでいます。例えば大森銀山については、昭和62年に重伝建に選定され、地元企業によって空き家改修や定住促進が、この重伝建選定を機に進められています。その結果として、飲食店などが増加し、空き家が埋まったり、現在、インキュベーション施設としてのサテライトオフィスやキャンパスなども進出しているということで、まちとして衰退を歯止めする効果が実現しているということになります。宿泊施設等も整備され、出生数の増加、また人口減少を抑制している効果が認められ、この大森銀山があります大森町の人口は、23年以降、大体350人台をおおむね維持しています。
それでは、松江市美保関町の状況はどうかといいますと、今回、美保関地区という名前で、美保関漁港周辺について、対象地域として文化庁と調整をしてまいりたいと考えています。御存じのとおり、美保関地区は、かつて北前船の寄港地として非常に活況を呈したところです。現在でも重要文化財である美保神社本殿、あるいは登録有形文化財である旅館美保館本館などの古い建物が残っており、青石畳通りをはじめとして、観光地として非常に有名です。この美保関地区について、重伝建に向かうべく、令和4年度から5年度にかけては、奈良文化財研究所に委託して保存対策調査を実施しました。この客観的な調査の結果として、近世以来の道路や建物の配置がよく残っている、美保関特有の伝統的建造物が多く保存されていると、文化財として高く評価をいただいています。令和4年度以降、今年度にかけて、住民組織、美保関まちなみ研究会が発足されました。その住民の皆様が参加され、先進例を視察に行っています。昨年度は岡山県矢掛町に、私も一緒に行かせていただきました。先進的な取組をされている事例を聞き、そして国の補助金をどのように活用できるかについても確認をさせていただいています。また、その町並みを活用して、地元住民の皆様が主体となってセキノイチというイベントを開催され、こういったイベントを通じて、町並みの保存について考える機会にもしていただいています。
これからの取組としての予定ですが、今年度、保存条例を11月市議会定例会に諮らせていただきます。その後、保存審議会の設置を経まして、令和7年度において重伝建選定の申し出を国に対してしていく準備を進めていこうと考えています。令和8年度を目途に、国の文化審議会への諮問がなされ、ここでめでたく重伝建に選定されるように手続を進めていきたいと考えています。めでたく選定されましたら、補助事業も開始されますし、記念イベント等の開催も考えていきたいと思っています。その後、これは重伝建に選定されて以降ですけども、防災計画の策定が必要となってまいります。これは9年度から11年度にかけてやっていく、その計画の策定のための委員会なり、また課題抽出等をしていくことを予定しています。
美保関地区の歴史的な町並みを市民の共有財産として後世へ継承すべく、今回、重伝建制度を活用していきたいと思っています。市民の皆様のご理解とご協力をよろしくお願いします。
この記事に関するお問い合わせ先
政策部 広報課
電話:0852-55-5125
ファックス:0852-55-5665
お問い合わせフォーム
更新日:2024年11月28日