令和7年2月市長所信表明

更新日:2025年02月25日

1.はじめに

松江市議会2月定例会の開会にあたり、これまで4年間の任期を振り返り、令和7年度に向けた所信を申し述べさせていただきます。

私は、市長就任直後の令和3年6月定例会の所信表明において、市政運営にあたっての「5つの基本的な視点」として、「市民に寄り添う市政の実行」「新型コロナウイルス感染症対策」「歴史・伝統・文化に育まれた地域資源の磨き上げ」「地域や業界を超えた連携の推進」「市域内のバランスの取れた発展」を挙げました。

就任から4年間、重きを置いて取り組んできた、この5つの視点ごとに、市政運営を振り返らせていただきます。

市民に寄り添う市政の実行

まず、「市民に寄り添う市政の実行」です。市民の皆様とともに歩みを進める市政を実現するため、本市からの情報発信の質と頻度を高めてまいりました。本市ホームページの全面的な改訂や公式LINEの新設導入、さらには、議員の皆様にご協力いただき、定例会においてモニターを用いて資料の共有を図るなど、市民の皆様にとってわかりやすい説明に心掛け工夫を凝らしてまいりました。加えて、「ふらっと縁カフェ」や「まちづくりを考える日」「ミライソウゾウ会議」「出前講座」など、市民の皆様と直接対話し、忌憚のないご意見を伺う機会の充実にも努めてまいりました。

市長就任1年目に、本市総合計画「MATSUE DREAMS 2030」を策定した際には、検討の当初段階より、中学生から大人まで幅広い世代を対象とするアンケートを実施し、およそ2千人から回答をいただくとともに、高校生から40歳までの若年層を公募し構成メンバーとする「ミライソウゾウ会議」や、市内5つのブロックごとに住民の皆様に参加を募る「タウンミーティング」を開催し、市民の皆様とともに作り上げる趣旨を徹底しました。総合計画の策定後も、同計画をテーマとした「出前講座」をこれまでに71回実施し、そのうち48回は私が自ら登壇させていただくことで、計画の浸透を図っております。さらに、市民の皆様からいただいたご意見を年度ごとのアクションプランに反映させて、計画の実効性を高めております。この、いわゆる「PDCAサイクル」を回す市政運営の手法については、外部から高く評価されており、昨年11月、毎日新聞社と早稲田大学が共催する「第19回マニフェスト大賞」において、首長部門の最優秀賞を受賞しました。

なお、今年度の「ミライソウゾウ会議」には、聴覚障がいのある方も参加され、メンバーそれぞれが筆談、身振り手振りや、簡単な手話を使って双方向のコミュニケーションに努めました。昨年12月に制定した「松江市手話言語条例」の基本理念「障がいの有無にかかわらず、すべての市民が互いに尊重して支え合い、心豊かに安心して暮らせる共生社会の実現」につながる取組みが実践されていると感じているところです。

こうして、「市民の皆様に寄り添う市政」を進める中で、市民の皆様とのコミュニケーションの大切さを実感しており、今後も積極的に市内各地に出かけ、市民の皆様と直接対話させていただく機会を設けてまいります。

本市は、小泉八雲が大切にした精神「オープンマインド」が根付くまちです。多様な価値観を受け容れる文化・風土を育み、市民一人ひとりの意思が尊重され安心して暮らせる地域社会を築くことで、市民の皆様とともに成長・発展してまいります。

新型コロナウイルス感染症対策

2点目は、「新型コロナウイルス感染症対策」です。4年前、世界中が「パンデミック」という未曽有の危機に直面しました。本市では、ワクチン接種を希望する人が、速やかにかつ安全に接種を受けられるよう必要な体制を整えることに力を注いだ結果、初回ワクチンの接種率は82.8%と全国平均を上回る水準に達することができました。一方で、団体行動は制限され、大人数で食卓を囲むことも難しくなるなど、これまでの「当たり前」が通用しなくなりました。感染拡大防止と社会経済活動の両立という難題に対して、可能な限り市民の皆様の「日常」を守ることができるよう、きめ細かいデータ分析と冷静な状況把握により、本市独自の判断で部活動を継続し、県内に魅力的な修学旅行先を見つけるなど、柔軟でしなやかな対応に努めてまいりました。

さらに、新型コロナウイルス感染症が収束を見せた後も、エネルギー価格や物価の高騰、円安の急激な進行などにより、市民生活や企業活動に深刻な影響が生じる中にあって、限られた予算で最大限の効果を得るために知恵を絞り、水道料金の減免や省エネ設備の導入補助など、創意工夫に基づく施策を相次いで投入し、難局を克服すべく積極的に取り組みました。

歴史・伝統・文化に育まれた地域資源の磨き上げ

3点目は、「歴史・伝統・文化に育まれた地域資源の磨き上げ」です。市域の「核」となる中心市街地では、「職人商店街」の形成に注力してまいりました。先人から脈々と受け継がれてきた、「本市ならでは」の伝統的なものづくりを支える職人技や匠の営みと、見て触れて体験できる店舗を「線」でつなぎ「職人商店街」を形づくることで、かけがえのない伝統・文化を次世代に継承してまいります。さらに、市民の皆様のふるさとに対する誇りと愛着を育み、内外からの観光誘客や消費を喚起することで、新たな賑わいづくりと地域経済の活性化を導いています。

これまでに、JR松江駅と国宝松江城の間に位置する6つの店(八雲塗やま本、彩雲堂、風流堂、そば処 玄(げん)、魚一、湖鳥(ことり))が、既存の店舗をリノベーションしてオープンに至りました。さらに、ここ3年ほどで、空き店舗などを活用した賑わいの拠点として、4つの複合施設(つむぎやTatemachi 2.0、佐草屋、てんじんBASE、しらかたBASE)が新規に開業したほか、昨年10月には、「職人商店街」のハブとなる「カラコロ工房」がリニューアルオープンし、中心市街地の回遊性が高まっています。引き続き、「点」を「線」で結び、本市の誇れるものづくり職人文化が連鎖的に体験できる、昼も夜も歩きたくなる商店街を創り上げてまいります。

観光地としての価値を高めるための有効な財源として、宿泊税の導入についても、道筋をつけたところです。昨年11月定例会において、「松江市宿泊税条例」の制定を議決していただき、今後、総務大臣の同意を得たうえで施行・導入することとしています。本市の宿泊税は、オーバーツーリズム対策を目的とする他の自治体とは異なり、本市の魅力を高め、国内外から多くの人に訪ねていただくことで経済の好循環を導き、将来にわたって持続可能な観光地として発展することを目的としています。まずは、「マーケティングとプロモーション」「オフシーズン対策」「観光推進組織づくり」に取り組むことで、持続可能な「観光のまちづくり」を進めるための足場を固め、ブランド力や訴求力の向上を図ってまいります。

地域や業界を超えた連携の推進

4点目は、「地域や業界を超えた連携の推進」です。

デジタル化やグローバル化が急速に進展する現代社会において、私たちが抱える課題は複雑化・多様化しており、従来の解決策が通用しない事態に直面しています。こうした状況をブレークスルーするためには、地域や業界の枠組みを超えた強固な連携と、それぞれが持つ多彩な資源を掛け合わせ「化学反応」を引き起こすことにより、新たな価値を創造していく必要があるものと確信しています。

そのため、令和5年1月に、「MATSUE起業エコシステムコンソーシアム」を設立し、新たなチャレンジを産学官金の「オール松江市」で応援する体制を整えました。また、昨年3月には、平成18年よりスタートした「Ruby City MATSUEプロジェクト」をバージョンアップし、これまでのミッション(「人材育成」「企業誘致」「コミュニティ活性化」)に「事業化支援」を加えました。「Rubyの聖地・松江」から、世界が直面する課題の解決策となるサービスやプロダクトを生み出すことを目指して、業種や地域・国境を跨いでボーダーレスにつながる連携を築いてまいります。

また、令和5年4月には、環境省から「脱炭素先行地域」に選定され、さらに同年5月には、島根県内で初めて内閣府から「SDGs未来都市」に選定されました。官民の連携により脱炭素化を進めることで、「国際文化観光都市・松江」の魅力に磨きをかけるべく取り組んでいます。中国電力が取得した「Jブルークレジット」を活用し、日本で初めて環境負荷の低減を組み込んだ旅行商品を造成し、これまでおよそ130人の方に本市を訪ねていただくとともに、島根スサノオマジックのホームゲームで排出される二酸化炭素をオフセットする企画を2度にわたり実施しました。また、大手自動車メーカー・ホンダとの協働により、昨年4月から、電動化した堀川遊覧船の運行を開始し、騒音も排気ガスもない自然環境に優しい観光コンテンツを提供しています。

加えて、新型コロナウイルス感染症の収束を待って、中国・韓国内の姉妹都市へ出向き交流を再開するとともに、中海・宍道湖・大山圏域市長会と台北市との間で連携協定を締結し、インド・ケララ州とは官民一体・圏域一体となったビジネス連携を再始動しました。さらに、アメリカのニューヨーク、シリコンバレー、フランスとの観光・産業面でのネットワークの構築、台湾に本社を置く世界最大の自転車メーカー・GIANTとの連携によるインバウンド・サイクリストの誘致にも、積極的に取り組んでまいりました。

国内の友好都市との連携では、昨年元日に発生した能登半島地震によって被災した、本市姉妹都市の石川県珠洲市に対して、のべ75人を超える職員派遣や物資提供などの支援を行ってまいりました。昨年11月には、私も吉金市議会議長とともに現地を訪れ、泉谷珠洲市長と面会し、今後の支援に向けて意見交換と現状視察を行いました。

珠洲市の支援に際しては、本市の姉妹都市である愛知県大口町の鈴木町長から「姉妹都市の姉妹都市は姉妹都市です」と温かいご提案をいただき、昨年の正月明け早々に両市共同で珠洲市に物資を届けました。「お互い様」の精神で友好都市間の連帯力が発揮できることに誇らしさを覚えるとともに、今後も、地域や業界の垣根を超えた固い「絆」を育んでまいります。

市域内のバランスの取れた発展

5点目は、「市域内のバランスの取れた発展」です。コロナ禍を経験し、人とのつながりの大切さや地域の団結力の尊さについて学びを得た私たちが必要とする、新しい時代に対応した「まちのかたち」として、「コンパクト・プラス・ネットワーク」の構築を目指すこととしています。

既存の集落や中心市街地を有機的に結び、市域内のどこからも生活に必要なサービスやコミュニティにアクセスできる暮らしを創るには、気軽に外出できる移動手段、交通ネットワークが求められます。

昨年10月、一畑バスが御津線を廃止した際には、本市がコミュニティバスを代替運行することとし、同じく大東線の廃止にあたっては、本市と雲南市が連携して新たにコミュニティバスを共同運行するなど、市民の皆様の利便性の維持に努めています。

昨年5月には、有識者、交通事業者、公共交通の利用者、地域の代表、行政らで構成する「公共交通で暮らしやすい未来を実現するプロジェクトチーム」を立ち上げ、チーム内に4つのワーキンググループを設置して、実に40回以上の協議を重ね、「バス運転体験会 バス・タクシー就業フェア」を開催したほか、いわゆる「日本版ライドシェア」の導入など具体的な取組みを実行に移しています。

特に、市内公共交通の骨格と言うべき路線バスについては、一畑バス・交通局・本市が一体となり、運転士不足の状況においても現行のサービス水準(運行便数、始発・終発時間など)を維持する方策を検討してまいりました。昨年12月には、独占禁止法の規制を超えて一畑バスと交通局が連携を図るため、「共同経営計画」の策定にかかる協定を締結し、この難局を乗り越えるべく動き出したところです。

さらに、「市域内のバランスの取れた発展」の実現を目的に、昭和45年に導入された現行の土地利用制度、いわゆる「線引き制度」の見直しを図ることを、令和5年2月に表明させていただきました。昨年度は、全29公民館区において、見直しの背景や効果に関する説明会を開催し、今年度も、市街化調整区域を有する19公民館区を対象に、地域ごとの特性を踏まえた意見交換会を実施しました。さらに、毎年度、都市計画の専門家や先進自治体を講師に招いた、市民参加によるシンポジウムを開催し、皆様とともに検討を重ねています。今後も、令和8年度の新制度導入を念頭に置き、丁寧に議論を進めてまいります。

人口減少対策

ここまで、私が市政運営にあたって大切にしてきた5つの視点ごとに、主な施策を振り返らせていただきました。

合わせて、本市の喫緊の課題である、人口減少への対応について触れさせていただきます。本市総合計画「MATSUE DREAMS 2030」において、2060年の目標人口を18万人と設定しました。現在の本市の人口は、昨年末時点の住民基本台帳によれば194,313人で、今年実施される国勢調査では20万人を下回ることが予想されます。地方部の人口減少や東京圏への一極集中は全国的な課題であり、国による戦略的な解決が求められる一方で、本市でも知恵を絞り、独自の人口減少対策を実施してまいりました。

とりわけ、若い世代の定住や移住を促し、人口の社会増と出生数の回復を図ることを目的に、まち全体で子育てを応援する環境の整備と機運の醸成、その充実に力を注いでいます。

AI・人工知能が子育て世代の悩みや疑問に24時間お答えする「まつえの子育てAIコンシェルジュ」は、今年1月末現在、2,917人の方に利用登録していただき好評を得ています。また、保育所の入所申込みから割当て、結果通知までをデジタル化して利便性を高めており、オンラインでの「スマート申請」による入所申込みが、今年4月に入所を希望する方の51.4%を占めるなど、デジタル技術を活用した子育て行政サービスが浸透してきています。

さらに、令和5年4月には、妊娠期から子育て期にわたり、妊産婦、子育て世帯、こどもたちに対する相談支援を担うワンストップ窓口「こども家庭センター」を新規に開設したことにより、家庭に関しての相談や訪問の件数が前年度比90%増となり、児童虐待やこどもの貧困、ヤングケアラーなどの事案が発見しやすくなっています。

さらに、令和5年度から、「いいいくじ」と語呂合わせできる11月19日を本市の「子育ての日」と定め、まちぐるみで子育てに取り組む機運を高めるイベントやキャンペーンを実施しています。

また今年度から、中学生までの子ども医療費を無償化し、令和7年度からは、医療費助成の対象年齢を高校生まで拡大することで、子育て世帯の経済的負担の軽減を図ることとしています。

こうした取組みが功を奏し、本市の30歳代における転入者と転出者の差、いわゆる社会増減が令和4年に増加(+16人)に転じ、さらに令和5年にかけては22人の増、令和5年から昨年にかけて85人の増と、増加幅も着実に広がっています。また、日本経済新聞社などが実施した「共働き子育てしやすい街ランキング」でも令和5年、6年の2年連続で中国・四国地方第2位を獲得しました。全国順位も直近で47位とランクアップしており、本市のデジタルとアナログを織り交ぜた、多彩な子育て支援策が評価された結果であるものと自負しています。

 

続いて、ここからは、本市総合計画「MATSUE DREAMS 2030」に掲げる「5つの柱」に沿って、これからの市政運営にかかる私の決意を、主な取組み事例とともに述べさせていただきます。

(1)しごとづくり

1つ目の柱は、企業や新しいビジネスに挑戦する人の前向きなチャレンジを後押しし、持続可能な経済成長を目指す「しごとづくり」です。

 

(小泉八雲・セツのドラマを活かした観光振興)

今年秋から、小泉八雲と妻セツがモデルのドラマの放送が始まります。これを、本市の知名度・ブランド力を高める千載一遇のチャンスと捉えて、全国・世界に向けて、松江の日常の営みや自然・伝統・文化を発信し、観光プロモーションに力を入れてまいります。そのため、昨年10月に設置した「小泉八雲・セツのドラマ応援室」を起点に官民が一体となって、この好機を一過性にとどめることなく、小泉八雲・セツの功績と精神を後世に引き継いでまいります。

 

(製造業のための「第5期ものづくりアクションプラン」)

本市にとって製造業は、観光業と並び、地域経済・地域社会の発展に大きく寄与する産業の柱です。令和7年度は、今年度内に策定する予定の「第5期ものづくりアクションプラン」に基づき、「変化に強い持続可能な企業づくり」を目標に、従来からニーズの高い生産性の向上や、小規模事業者に対する支援に、改めて重点的に取り組みます。加えて、目下の経済環境と、企業へのアンケートやヒアリング調査の結果に鑑み、プロフェッショナル副業人材や営業代行を活用した新規取引先の獲得、新たな事業分野への進出に向けた生産設備の導入、働きやすさの改善による人材定着とスキルアップによる業務効率化、ものづくり体験教室の開催による企業認知度の向上など、市内企業によるチャレンジを積極的に応援してまいります。

 

 (スマート農業・アワビの陸上養殖による農・水産業振興)

農業の担い手が減少の一途を辿る中で、事業収益が確保できる、いわゆる「儲かる農業」を実践するため、労働環境の改善と生産性向上に寄与する「スマート農業」を推進しています。令和5年度には、スマート農業にかかるアドバイザーを配置し、今年度は、農業に従事する皆様にスマート農業の普及啓発を図るセミナーを開催して、およそ80人の方に参加いただきました。参加された皆様からは、労働力不足の補完や作業効率化につながると期待の声が多数寄せられた一方で、スマート農業機械の導入にかかる金銭的負担が課題といった意見もいただいています。令和7年度は、補助の上限額と対象者の拡充により、スマート農業の普及と定着をバックアップしてまいります。

また、令和4年度から取り組んでいるアワビの陸上養殖について、令和7年度は、地下海水の活用による養殖事業の採算性を検証し、本市のブランド産品に昇華する可能性を追及してまいります。

 

(IT 5 Days プログラムの提供と新企業団地の整備)

近時、人材不足が深刻化する中にあって、女性や若年層が活躍できる地域社会を築くための取組みとして、本市が長年にわたり力を入れてきたIT分野の専門人材育成を目的に、文系の大学生がITエンジニア就業を体験できる「まつえIT 5 Days プログラム」を提供します。

また、地場企業の設備拡張ニーズや市外企業の本市進出ニーズに呼応して、松江だんだん道路・川津インターチェンジ至近の、下東川津町と上東川津町にまたがる中尾地区に、新たな企業団地の整備を計画しています。令和9年中の分譲開始を目指して用地取得や造成工事を進め、企業の立地意欲に応じるとともに、雇用の創出と地域産業の振興を図ってまいります。

(2)ひとづくり

2つ目の柱は、誰もが自らの能力を存分に発揮し、いきいきと活躍できる社会の実現を目指す「ひとづくり」です。

 

(多機関連携による福祉の充実)

現在、社会課題となっているヤングケアラーに関する実態の把握、相談対応、啓発活動に取り組むため、令和5年度に、こども子育て部内に「ヤングケアラーコーディネーター」を配置しました。今年度は、市立の小・中・義務教育学校全47校を対象にアンケート・ヒアリング調査を行い、きめ細やかな実態の把握に努めております。市民の皆様からの電話・面談・訪問による相談対応の件数は、令和5年度は30件だったのに対して、今年度は1月末時点で81件と大幅に増加しており、支援が必要な家庭に対しては、ヘルパーの派遣、こども食堂など「こどもの居場所」にかかる情報提供、家庭の課題に応じた関係機関の紹介などを行っています。

また、解決が容易でない複雑化・複合化した生活上の課題やニーズに対応するため、「高齢者」「障がい者」「子育て世帯」などの分野を問わない総合相談窓口である「ふくしなんでも相談所」や、妊娠期から子育て期まで切れ目なく、こども・子育て支援を提供する「こども家庭センター」において相談を受け、関係機関が連携して、重層的・包括的にサポートする体制を充実させてまいります。

 

(地域を支えるひとづくり)

地域の課題を地元住民が主体となって解決する機運を醸成すべく、自ら行動する個人や団体を、関係者が一体となって支援する仕組みを構築し運用してまいります。

市民活動・地域活動の成功事例を共有し、市内他地域への横展開や自立的な活動を促進する「まちづくりを考える日」、地域課題の解決に向けて、町内会・自治会、公民館、社会福祉協議会、市民活動団体、民間企業、行政などの関係者がつながり、知恵を出し合い解決を目指す「まちづくりでつながる日」を引き続き開催します。

住民ニーズが多様化し地域課題も複雑化する中、「まちづくりを考える日・つながる日」の取組みを通じて地域活動の具体的な成果や意義を共有し、既存コミュニティへの参加を促すとともに、多彩な主体が交流することで生まれる新たな発想やアイデアの実現を後押しし、本市の地域力を高めます。

同時に、誰もが地域課題を「自分ごと」と捉えて、「支える側」「支えられる側」といった固定観念を超え、みんなが自らの役割を持ち支え合いながら、自分らしく輝ける「共生社会」の実現に努めてまいります。

(3)つながりづくり

3つ目の柱は、本市が誇る歴史・伝統・文化への関心を高め、音楽・芸術・スポーツで「夢を実現できるまち 誇れるまち」を創造する「つながりづくり」です。

 

(松江城天守国宝指定から10周年)

令和7年度は、平成27年7月8日に松江城天守が国宝に指定されてから、10周年の節目を迎えます。さらに、明治8年に、松江城内の建物が陸軍から民間へ払い下げられ取り壊しが決まった際、地元有志が天守の保存を働きかけ、その危機を免れてから150年という節目にもあたります。

本市のシンボルであり市民にとってかけがえのない存在である国宝松江城の魅力を、より多くの方に知っていただくため、今年6月に、日本最大級の城の祭典「お城EXPO」の特別版を本市において開催します。また、その中で、国宝の5城が所在する5市の首長が一堂に会して実施する、「お城サミット」と銘打ったパネルディスカッションなどを通じて、国宝松江城の価値を市内外に発信してまいります。

 

(プラバホールリニューアル後の活用)

昨年3月、春の選抜高校野球大会の開幕式で、島根県立松江北高等学校3年生の門脇早紀(かどわき・さき)さんが「君が代」をアカペラで独唱されました。門脇さんは、5歳から松江プラバ少年少女合唱隊の一員として活躍され、「音楽文化が根付く松江の、大好きなプラバホールで将来歌いたい」との夢を抱き、プロの声楽家を目指して東京藝術大学に進学されています。

プラバホールは、昨年4月に全面改装を終え、本市初となるネーミングライツを導入し、「さんびる文化センタープラバホール」としてリニューアルオープンしました。中国・四国地方の公共ホールとして、唯一プラバホールだけが備えるパイプオルガンも、今回のリニューアルに合わせてオーバーホールしています。さらに、昨年7月には、神奈川県川崎市の音楽ホール「ミューザ川崎シンフォニーホール」の統括責任者として実績を重ねてこられた竹内淳(たけうち・じゅん)さんを専属の音楽プロデューサーに迎えました。現在、音楽文化が根付く本市の基幹施設として、その価値を高めるべく、小泉八雲など地域の文化的な資源やストーリーを融合したコンサートをはじめとする、新たな企画に着手しています。

市民の皆様が気軽にプラバホールを訪ねて、一流の音楽芸術や地元音楽家の演奏に触れ、心が休まり癒されると同時に、心揺さぶられ感動を味わえる「豊かな音楽体験の場」として最大限活用することで、本市音楽文化の振興を図ってまいります。

 

(スポーツによるまちづくり)

スポーツによるまちづくりにも注力します。今年7月末から8月初旬にかけて、全国高等学校総合体育大会が中国5県で開催され、本市では、松江市総合体育館と鹿島総合体育館において男子バレーボール競技が実施されます。出場する高校生が持てる力を十二分に発揮し、将来の活躍につながる大会となるよう、万全の準備を整え滞りのない大会運営に努めてまいります。

 

(総合体育館周辺エリア未来ビジョン)

市民の誇りとなっている、地元プロバスケットボールチーム「島根スサノオマジック」が本拠とする、松江市総合体育館については、「2026-27シーズン」に開幕する「B. LEAGUE PREMIER(ビーリーグプレミア)」の基準に適合したアリーナとなるよう、令和8年秋の完成を目指して、観客席やスイートラウンジの増設などの改修に取り組んでまいります。

また、これを契機に、総合体育館周辺エリアの賑わいを創出すべく、「松江駅前デザイン」や「中心市街地エリアビジョン」との整合を図りながら、「総合体育館周辺エリア未来ビジョン検討会議」において検討が進められています。令和7年度には、サウンディング調査を行うなどして事業構想の具体化を図り、総合体育館周辺エリアの活性化を導いてまいります。

 

(ふるさと納税)

本市のふるさと納税寄附額は、私が市長に就任する前の令和元年度、2年度はともに8千万円台、令和3年度は1億6千万円、令和4年度は2億1千万円、令和5年度は3億8千万円と右肩上がりに推移しており、今年度は、目標として設定していた寄附額5億円に到達する見込みです。

昨年12月には、地元IT企業が開発した、現地決済型ふるさと納税システム「ふるさとりっぷ」を全国で初めて採用し、本市を訪れた人がその場で寄附して返礼品を受け取るサービスをスタートしました。今後、市内事業者の皆様のご協力の下、本サービスの利用施設を拡大するとともに、「体験型返礼品」の開発を進め、本市の魅力発信とブランディングを強化します。

令和7年度は、ふるさと納税寄附額の目標を6億円と定め、市内事業者の皆様と協議を重ねながら、その達成に向けて戦略的に取り組んでまいります。

(4)どだいづくり

4つ目の柱は、市民の皆様が安心できる、安全な暮らしを支えるため、都市基盤や社会資本の整備に取り組む「どだいづくり」です。

 

(松江北道路)

令和3年4月の都市計画決定を受けて、島根県により整備が進められている、全長10.5キロメートルの「松江北道路」は、境港市と出雲市を島根半島で結ぶ全長約70キロメートルの「境港出雲道路」の一部を構成します。市街地の外環状道路を形成することで、市内中心部における渋滞の緩和、災害時の避難路・輸送路の確保、山陰道へのアクセス向上などを実現する、重要な道路となります。

島根県は、松江だんだん道路に接続する川津インターチェンジ側から西側に向けて段階的に整備を進める方針を打ち出しており、令和7年度中の工事着手が見込まれるところ、「松江北道路」ならびに「境港出雲道路」の早期完成に向けて、引き続き県とともに取り組んでまいります。

 

(松江駅前デザイン)

本市の玄関口であるJR松江駅前の再開発については、令和5年12月に設置した「松江駅前デザイン会議」によって、中長期的な視点から検討がなされ、「交通結節機能」や「交流・防災機能」など求められる機能を配置した「松江駅前デザイン案」が立案されています。

今後、市民の皆様、議員の皆様からいただいたご意見を踏まえて、複数の「松江駅前デザイン」が取りまとめられる見込みであり、これを踏まえて本市として目指すべき方向性を整理して、市民の皆様、議員の皆様に丁寧に説明を行うことで、松江駅前の再開発を進めてまいります。

 

(水辺の利活用)

宍道湖畔の岸公園や白潟公園では、従来から、「水の都・松江」の魅力を高めることを目的に官民で組織する「ミズベリング松江協議会」が中心となって、水辺の賑わいを創出するイベントを開催してきましたが、これらの実績が国に認められ、昨年9月に、いわゆる「河川空間のオープン化区域」に指定され、宍道湖畔を商業目的などで利用しやすい環境が整いました。

令和7年度には、「宍道湖・大橋川かわまちづくり計画」に基づき、国が整備を進める宍道湖北岸の親水護岸のうち、「水辺ステージ」と「多目的テラス」の供用が開始される予定です。令和10年度には、水遊びが楽しめる「ちゃぷちゃぷ広場」を含む千鳥南公園の供用が見込まれており、水辺エリアの機能強化を図ることで、「水の都・松江」の魅力を実感できるまちづくりに取り組んでまいります。

 

(「健康寿命」の延伸)

市民の皆様に、「歳を重ねるほど松江は楽しい」と感じていただけるよう、馴染みの方と顔を合わせ交流しながら、身近な場所で運動機能の維持・向上を図る「からだ元気塾」や「なごやか寄り合い事業」を実施しています。

さらに、全29公民館区で結成された「健康まつえ21推進隊」が実施する、地域のつながりや資源を活かした住民主体の健康づくりを支援し、市民の皆様の健康寿命延伸を推進してまいります。

(5)なかまづくり

5つ目の柱は、ユニークな地域資源を活用し、中海・宍道湖・大山圏域が一体となって、その魅力を高めるための「なかまづくり」です。

 

(8の字ルート・山陰新幹線、中国横断新幹線(伯備新幹線))

私たちの圏域が持続的な発展を遂げるためには、他地域に比べ遅れをとっているインフラ整備が必要不可欠です。令和7年度は、災害時の避難、渋滞の緩和、産業の振興・活性化、観光周遊の円滑化などの観点から、中海と宍道湖の周囲を結ぶ高規格道路「中海・宍道湖8の字ルート」の整備促進に、圏域の官民が一体となって力を尽くしてまいります。

また、中国横断新幹線(伯備新幹線)と山陰新幹線の早期実現に向けて、活動主体である「中国横断新幹線(伯備新幹線)整備推進会議」を中心に、地域全体の機運醸成を促すともに、整備計画への格上げにより新幹線整備を目指す他地域の組織・団体と連携して、国に対する要望活動に取り組んでまいります。

 

(インドMOU更新)

インド哲学の権威で本市名誉市民である中村元(なかむら・はじめ)博士のご縁にあやかり、圏域市長会とインド・ケララ州政府が交流覚書を締結してから、令和7年度が10周年の節目にあたります。これを契機に、覚書の更新などを通じた行政間の関係深化と、民間ベースの具体的なビジネス連携を推進することで、両地域が「ウィンウィン(win-win)」となる関係を構築します。

圏域市長会の目指す「あたかも一つのまち」の実現に向けて、本市がリーダーシップを発揮してまいります。

終わりに

冒頭申し上げたとおり、私は、今年4月以降、引き続き市長として2期目の市政を担わせていただき、本市総合計画「MATSUE DREAMS 2030」に掲げる政策を着実に実行・実現することで、「夢を実現できるまち 誇れるまち 松江」を創造すべく、歩みを進めてまいる所存です。

本市は、その人口規模、経済力、産業集積度や、高速交通をはじめとするインフラの整備状況などから見れば、決して他の地域に比べ恵まれた環境にはなく、全国の地方都市が直面する人口減少や少子高齢化などの課題は深刻さを増しています。

しかしながら、豊かな自然・歴史・伝統・文化に育まれた、誠実で真面目な市民気質とまとまりのあるコミュニティによって、課題解決や防災につながる確固たる地域力が培われています。

こうした土壌を最大限生かし、「課題先進市」であると自覚したうえで、志のある関係者が一体となって、その課題解決に先駆的にチャレンジすることで、全国・世界に通用するロールモデルを構築し、「解決先進市」になることができるものと確信しています。

現に、本市が積極的に推進する、子育て支援や環境負荷の低減につながる取組みについては、日本全国のみならず国際機関(国連人口基金)からも注目を受けており、国内外のシンポジウムやセミナーにたびたび招聘され、私自身が直接出向いてプレゼンテーションを行っています。

これからも斬新なチャレンジを重ねることで、地域課題の解決に向けた「トップランナー」となり、本市の存在感やブランド力を高めるとともに、市民一人ひとりが「ここに生まれてよかった ここで育ち育ててよかった」と、いわゆる「ウェルビーイング(Well-being)」(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)、「幸福」を実感できる松江を創ってまいります。

 

令和7年は、1市7町村の合併により新松江市が誕生してから20年、松江城天守が国宝に指定されてから10年を迎え、本市の歴史・文化を振り返り未来を展望する節目の年となります。

4月には「大阪・関西万博」が開幕し世界中から観光客が来日するとともに、秋からは小泉八雲の妻・セツをモデルにしたドラマが放映されるなど、本市の魅力を全国・世界に発信する絶好のチャンスが訪れます。

そして、今年は巳年・蛇年です。脱皮を繰り返して成長を遂げるヘビの如く、本市は変化を重ね、進化し、「化け」ていきます。大きな時代の転換点に立つ私たちが、新たな《時代》を切り拓く先駆者となり、古(いにしえ)からのバトンを《次代》につなぐべく、全力で市政運営にあたってまいる覚悟です。

「夢を実現できるまち 誇れるまち 松江」の創造に向けて、市民の皆様とともに、そして議員の皆様とは市政を導く「車の両輪」となって、私たちが大好きな松江市の歩みを進めてまいりましょう。

ここに、皆様のご期待にお応えすべく、誠心誠意取り組んでまいりますことをお約束するとともに、市民の皆様、議員の皆様方のご理解とご協力をお願い申し上げまして、私の所信とさせていただきます。

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